日本の電子書籍市場は立ち上がるか?

電子コンテンツ・ビジネス雑感



電子書籍を発行する立場としては悔しいんですが、現状を正確に分析した内容である、と言わざるを得ません。電子書籍元年と言われながらなかなか日本で市場が立ち上がらない理由は、



1.デバイスの普及度が低い

 これは鶏と玉子の話になるのですが、読めるコンテンツが少ないからデバイスの普及も遅く、今のところは新しいもの好きのITギーク層に限られている気がします。日本の大手出版社がこぞってAmazon・Appleへのコンテンツ流通に反対している状況が変わらないと大きな変化が望めないでしょうね。



2.書店流通網の整備

 これも諸外国、特にアメリカと比べると日本の書店網の整備具合はそれはもう至れり尽くせりだと思います。殆どの駅前にちょっとした本屋さんはありますし、宅配便の行き届いた日本ではAmazonが下手したら当日配送してくれますからね。オンデマンドで好きな時に、までは行きませんが、相当流通スピードが高いのが消費者に特に不便だと感じさせない大きな理由でしょう。別の観点で見れば、日本の書店経営の特殊性も大きいですよね。再販制に守られて定価販売が約束されていて、委託販売制があるから返品自由なんて、そんな楽な商売他にありますか? そりゃあちこちに一杯出来ますよね。さすがに近年の競争激化で書店も淘汰の時代を迎えていますが、これが一定の数以下に減らない限り消費者の利便性は損なわれないでしょう。ただ、行き着く先は今のCDショップと同じだとは思いますけどね。



という二点に集約されると思います。さて、この状況に風穴が開くのはいつなのか?



アマゾン電子書籍、40社と配信合意 学研・PHPなど



と思っていたら、こんなニュースがリリースされました。どうもこの記事も飛ばし気味で、本当に合意しているのか怪しいんですが、各社水面下でAmazonと条件交渉をしている事には間違いないでしょう。どんなに抵抗しても技術の進歩で進む未来は決まってしまいますから、どこかで決着せざるを得ないでしょう。



ウチは今のところ「CARZY」の販売を独自のiOSアプリと、独自のサイトを通じてのPDF提供という形態を取っていますが、本当はiBooksやKindleで普通に売りたいんですよ。独自の窓口を通じて売るのは集客面で大変だし、アプリの開発なんてしたくない。ソースはPDF等の汎用フォーマットで制作してそれで各所に配布したいんですよ。しかしなかなか日本語コンテンツの販売に門戸が開かれないんです。同じようにジリジリしているコンテンツ制作者は多いんじゃないでしょうか。



ま、市場環境が整わないと商売にならないので、今のところは我慢してコンテンツの仕込み時期だと思うことにしています。一旦作ったコンテンツが腐らないのも、流通から排除されないのも、電子書籍市場の利点ですからね。日本で本当に花開くのはまだ一・二年掛かりそうですけど、今が我慢のしどきなのだと思っています。