佐藤琢磨のチャレンジ

F1のモナコGP・ルマン24時間レースに並ぶ世界の三大レースの一つ、インディ500が先週末に開催されました。丁度モナコGPと重なったのですが、そこで劇的なドラマが起こりました。なんと、最終ラップのトップ争いに佐藤琢磨が絡み、インに飛び込んで抜き去ろうとした瞬間にクラッシュ。残念ながら優勝はなりませんでしたが、そのチャレンジに全世界のインディファンが熱い拍手を送っています。そのクラッシュシーンをご覧下さい。(三番目を走っているブルーと白のマシンが琢磨です)



正直、最終ストレートで並び掛けた琢磨のマシンに対して強烈にインを絞っているダリオ・フランキッティのライン取りはアンフェアだと思うのですが、これがレースというもの。ダリオもこれで三回目のインディ500チャンピオンとなる超ベテラン選手。簡単には勝たせてくれない、といったところでしょうか。



レース終了後に琢磨がチームオーナーのボビー・レイホールに謝ったのですが、ボビーの台詞が泣かせます。
暫くして琢磨が医務室からガレージへと戻って来た。そこへレイホールは歩み寄り、頬にキスをした。「ボビー、ごめん」と琢磨。するとレイホールは、「何を謝る必要があるんだ? お前は優勝を狙ってアタックしたんじゃないか」と答え、琢磨をガッシリと抱きしめた。


2012 INDYCARレポート:5月27日 第96回インディアナポリス500 決勝/琢磨とレイホール、ドライバー同士だから理解できる攻めの姿勢



私は佐藤琢磨の経歴に感動して息子の名前に付けたほどのファンなのですが、琢磨のF1歴は期待と裏腹に目立った成果を残せませんでした。あまりにアグレッシブ過ぎるドライビングスタイルが非難の的になったりもしましたが、琢磨にはインディのスタイルが合っているんじゃないかな。今回のチャレンジもファンには非常に好意的に受け取られています。インディは風土としてチャンピオンだけが賞賛されて、二位以下には光が当たりません。(何と、二位のドライバーには”最も速かった敗者”という称号が授けられる!) だからこそのチャレンジだったのですね。



実は最近レース展開が単調になりがちなF1よりもインディシリーズの方が面白いのでは、と感じている次第。エンターティンメントの本場アメリカだけに、盛り上げ方をよく知っているんですよね。オーバルコースは目の前で全てのシチュエーションを追えるし、しょっちゅうクラッシュやセーフティーカーの導入があってレースがリセットされるので最後まで目が離せません。琢磨の日本人初のインディウィナーを期待したいですね。