デフレ脱却の方策

“戦国武将”たちへの権限委譲、デフレ脱却はこれしかない



大前研一さん、好きなんですよね。マイナス評価も多い方なのは存じてます。ちょっと自信過剰で、上から目線なところが生理的に拒否される理由でしょうか。でも、ご本人もそこは良く自覚してらっしゃるんですよ。東京都知事選挙に出馬して負けた後に出版された「敗戦記」を読んだ時は、ああ、経験が人をここまで変えるんだな!、と感動したものです。そんな大前さんもそろそろいいお年なんですが、今でもその見識の高さは絶品だと思っています。高い視点、広い視野、深い洞察力から繰り出される分析と提言は一級品です。難があるとすれば、実行段階のハードルが高すぎる事ですかね。それが簡単に出来るなら誰も苦労しませんよ大前先生、みたいな。大きなテーマを整理したい時には、じっくり読んでみると考えが整理されますよ。



そんな大前さんがデフレに苦しむ日本が取るべき方策を取り上げています。現状分析も的確ですよね。
つまり、資金需要も消費意欲もない高齢者が経済を主導するようになり、50歳前後の700万人もの人々がバブル崩壊後の景気刺激策でステップローンなどに騙されて住宅購入をしてしまった。この人々はいま住宅価格の下落で実質債務超過となっており、その後の昇進も昇級も思うに任せないで苦労している。経済を牽引すべき世代がヘタッているのが日本の一大特徴である。



 その子供達が草食系やフリーターになるのも、時代・世代・年代の因果関係を見れば理解できないことではない。
もう一つ。皮肉なことに、日本の普通の企業は、融資を必要としていないところがほとんどになっている。国内成長に期待しなくなった企業の多くは、自己資金か減価償却で投資をまかなうことができる体質を作ってきたからだ。



 これは銀行が企業を裏切る姿を1990年代にイヤと言うほど見てきたからでもあるが、同時に「金利が低くても借金したくない」と考える慎重な経営者が結局生き残っている、という適者生存の結果でもある。



 逆に、融資を欲しがっている企業は、経営がおかしくて資金繰りに困っているところが目立つ。



 言い換えると、海外に投資機会があり、日本国内には成長産業が見当たらないということでもある。しかも最近は円高なので、日本で追加投資してもそれに見合った利益が得られない。ますます普通の企業は融資を必要とせず、日本国内にお金が回らなくなっているというわけだ。
その通りです。消費を牽引すべき人口のボリュームゾーン、団塊の世代が60歳を超える年に差し掛かり、現役を引退しようとしています。本来活発に消費活動を行うはずの30・40代がやせ細ってしまっているんですね。これに晩婚化と少子化が輪を掛けて消費市場を小さくしてしまっています。企業も、全体的に守りのマインドが強いですよね。バブル期のイケイケでずっこけた姿を散々見ていますから、投資にも借金にも非常に慎重です。日本全体が総じて三すくみ状態にあると言えるでしょう。



では、どうしたら良いのか。大前さんも魔法の答えを持ち合わせているわけではありません。
日本の国家戦略がことごとく失敗し、今日に至っても前述のようなお粗末なアイデアしかないということは、中央政府が主導するのを止めて、アイデアと意欲のある地方に思い切って権限を委譲すべきで、そういう方法がそろそろ国家戦略の中心に置かれなくてはいけない。



 つまり、橋下徹大阪市長の提案するような「都」に成長戦略を委ねることである。どうせ中央でアイデアをこねくり回しても政権はそう長くは持たない。せめて2期8年くらいの大統領(首長)にバトンをタッチする、という決断が必要だ。橋下プランだけではなく、名乗り出る“戦国武将”にはみなやらせてみる。そういう一国二制度への切り替えが求められているのだ。
つまり道州制の導入による地方分権ですね。国として大きな施策を採用するのが難しいので、ユニットを小さく分けて地方でアイデアを試そう、という事です。確かに、そういう方向しか突破口が無い気がします。国の形を大きく変えるグランドデザイン力が求められていますね。民主党政権では、実現無理かな?