PayPal Japan設立の意味

ソフトバンクがPayPalと戦略的提携、「日本の決済を変える」新会社を設立へ



一般紙でも取り上げられたこのニュース、孫さんがやる事なので注目を浴びるのは当然ですが、私は疑問です。



日本版squareはどこか?



↑だいぶ前にまとめたので全部は書きませんが、元々本家アメリカで注目されたSquareというビジネスモデルの劣化コピーに過ぎないと思います。このビジネスモデルのポイントを挙げると、



・基本は従来の対面型店舗内オフライン決済がターゲット

・クレジットカード読み取り端末としてスマホ/タブレットを流用する事でイニシャルコストを激減



という二点です。勘違いしている人も多いみたいですが、PayPalが絡んでいるからといっても本件はあくまでオフラインでの決済シーンが主戦場です。今まで加盟店契約してクレジットカード決済を導入するのには幾つかのハードルがありましたよね。



・契約審査が面倒

・読み取り端末が高価

・クレジットカードの決済手数料が負担

・資金回収が遅くなる



読み取り端末は契約によってはクレジットカード会社から無償に近い貸与を受ける事も多いみたいですが、それでも台数は限られます。それがスマホ/タブレットを使う事で、客の目の前でカード処理をする事が可能になります。最近は百貨店でもカードを店員に預けてから奥のレジまで持って行って帰ってくるのにえらく時間が掛かるじゃないですか。それが目の前で処理が済むのは時間短縮と、客の安心感に繋がります。海外ではクレジットカードのスキミングなんかも心配ですから、見える範囲で処理してくれる事に大きな意味があるのです。



更に日本でクレジットカードの導入が進まない理由が、高額な決済手数料と回収期間の長さです。これがSquareだと決済料率はわずかに2.75%。更に決済した翌日には口座に代金が振り込まれるというスピーディーさ。回収に一ヶ月以上、料率も5%とかの日本とは大違いですよね。



こう見てくると、今回のPayPal JapanのスキームがSquareにかなり見劣りすることが分かります。PayPal Japanのモデルは、



・端末費用:1,200円

・決済料率:5%

・回収期間:即時



となります。回収期間が短い以外は割高ですよね。まあ、ソフトバンクの事ですから例によって絨毯爆撃で端末を無料でばらまく作戦を取るかも知れず、営業力は期待出来ますが。



このモデル自体は非常に魅力的で、事実アメリカでのSquareの決済実績はうなぎ登りです。



Squareのクレジットカード処理金額は、年間50億ドル相当、3月から25%アップ



なかなか日本でSquareの事業が始まらないので私が手を上げようかとも思ったのですが(笑)、実際には決済ビジネスには非常に難しい点が二つあります。



支払いサービスがAppleやGoogleにさえ難しい理由



つまり、カスタマーサービスとリスク評価システム。両方共にハードルの高い障壁で、簡単に他社が参入出来ない理由です。その意味では今回のソフトバンクの戦略は、既に出来上がったPayPalのシステムに乗っかるだけですからリスクがないですね。典型的なタイムマシン経営です。ま、この目の付け所の良さと動きのスピーディーさに日本の古い大企業が太刀打ち出来ないんですが…。私としては、本家のSquareと組んだ新勢力の台頭を期待しますけど、他に手を挙げる会社がないかな?