「パラダイス鎖国」

海部 美知さんの「パラダイス鎖国」を読みました。

世界第二の経済大国という大きな国内マーケットを持つが故にグローバル化に遅れを取りがちな日本経済に、”ゆっくりとした変革”を提言する良書です。

毎年夏に帰るごとに、「日本はどんどん住みやすくなっていくな…」とぼんやり思っていたが、今年の夏は決定的に、「日本はもう住みやすくなりすぎて、日本だけで閉じた生活でいいと思うようになってしまった」、つまり誰からも強制されない、「パラダイス的新鎖国時代」になってしまったように感じたのだった。


とありますが、今の若者の海外への無関心な態度もこういう雰囲気がもたらしているんでしょうね。

確かに内向きなままで暮らして行ければそれに越したことはないのかも知れませんが、実際問題我々の日常生活は否応なく世界経済の中に組み込まれており、それは昨今のガソリンの値上がりや食の危機問題に例を見るまでもなく明らかです。

軽々と国境を越える企業や個人と、国内だけにしがみつく企業・個人の間に格差が広がるのは当然です。



昨今は、性急なグローバル化が日本の伝統まで破壊してしまう事に大きな警鐘を訴える意見が多く見受けられます。

確かにいきなり大規模な移民受け入れ策などを導入すれば、日本の良さが消えることになる危険性も孕みます。

筆者は、ゆるやかに多様性を身に付けようよ、と現実的な提案をしています。

人とは違う価値観を持つ”プチ変人”の存在を認め、転職や起業といった人材の流動性を促進し、Webで自分の意見を表明して議論に加わる。

既存の価値観を守る人は、それはそれで良い、という柔軟な態度が心地よいですね。