Airbnb Story

Airbnb Story



今やシェアリングエコノミーの旗手として知らぬ者のいないAirbnbですが、実はまだ創立から10年経たない若い企業です。そのユニコーンの生い立ちから今日までを追った質の高いノンフィクション。思わず引き込まれます。決して天才肌ではない創業メンバー三人が、それでも過去に例を見ないスピードで300億ドル超の企業を作れた理由は何か。沢山の名言が出てくるのですが、私が一番好きな言葉はこれです。
「なんとなく好きになってくれる100万人より、熱烈に愛してくれる100人のファンのほうがはるかにいい」――ポール・グレアム
なるほどな、と。サービスを立ち上げる時には”ペルソナ”という典型的なユーザー像を描いて、その仮想ターゲットに刺さる設計にすることが成功の近道と言われますが、こういうことなんですね。多数ウケしようとしてサービスの特性が曖昧になるより、狭くてもある特定の層に強烈にアピールする内容の方が明確に差別化できる。量より質、とも言えましょうか。



何となくITサービスは仕組みを作ってスケールさせるというイメージなんですが、Airbnbは真逆をやり続けた会社でもあります。全くユーザーが集まらなくて最初はスーパーで買ったシリアルを売ったり、NYのホストを一軒一軒個別に訪問して自分達で写真を撮り歩いたり。決して最初から順風満帆に成長したわけではなく、三度のローンチをしてもなおユーザーは集まらずクレジットカードの借金だけが残ったとあります。彼らの苦労の跡を知ると、起業を志す者としてなんだか勇気が湧いてきます。



「ラクダに砂漠を渡れてキリンが渡れない理由、それはキリンには先が見えすぎるから」という話を聞いたことがあります。起業家って、ちょっと馬鹿なくらいで丁度良いんじゃないでしょうか。利口な人は先が見えるから、リスクをあえて背負うことをしないんじゃないかと思います。先読みしすぎずに愚鈍に夢を追い掛ける諦めの悪さ、それがAirbnb創業者の三人に共通の資質である気がするのです。凡人の自分にもどこまでできるか、夢を追ってみよう。そう思っています。