フィリピン訪問記

数日お休みを頂いて、フィリピンに行ってきました。基本は遊びなんですが、やっぱり行けばその国の国情が気になります。私の個人的なアジア各国ランキングは、



<Aランク>

・韓国

・台湾

・香港

・シンガポール



<Bランク>

・中国

・マレーシア

・タイ

・インドネシア



<Cランク>

・インド

・フィリピン

・ベトナム

・ミャンマー

・ラオス



というイメージでした。フィリピンは、イメージとしてはCランク。そして実際に訪れた現地で目の当たりにしたのは、非常に酷いスラムの群れでした。「スラムドッグ$ミリオネア」という映画がありましたが、まさにあの世界ですね。ゴミにまみれた、住まいとは呼べないバラックや倉庫跡に大勢の人がたむろしています。あそこで生まれた子供達はきっと一生この生活から抜け出せないんだろうな、と思うと胸が切なくなりました…。



フィリピンで20年近くビジネスをしている会社の方と夕食。会場はグリーンベルトというマニラ中心部の巨大なモールの中。ズラッとブランドショップが立ち並び、シャングリラを始めとする高級ホテルが付近に立ち並ぶこのエリアは、さっきのスラムと本当に同じ国にあるものなのでしょうか? あまりに貧富のギャップが激しくて、現実感がありません。知人の話では、フィリピンは非常に少数の富裕層が経済基盤の殆どを握っており、この巨大モールも個人所有の土地に建っているのだとか。外で写真撮っちゃダメなんですって。個人資産だから。何じゃそれ。確かに、こんな綺麗なモールを訪れてショッピングや食事をする中間層も育ってはいます。しかし国民の大多数が貧しいことに変わりはない。何と国民の70%ほどが銀行口座も持っていないのだとか! 基本的にプリペイドチャージを多用し、タバコも一本ずつその時必要な分だけ購入する。値引きよりも、二つ買うともう一つプレゼント、という後追いでモノが貰えるスタイルが好まれる。大卒の初任給は2万円程度、タクシーの初乗りは40ペソ(=80円)。体感ベースの物価は1/10ですね。



香港に行った時にも感じたのですが、我々のようなECサービスが普及する段階にはほど遠い。飲食や携帯電話などの生活に密着したサービスの普及段階であって、ネットショッピングなんて余裕は一般大衆にはありません。当面は富裕層+アッパーミドル層の小さなマーケットしか期待出来ないでしょうね。アジア各国のEC事情についての資料がありましたので、ちょっと古いんですがご紹介しておきます。



アジア域における電子商取引の動向



ただ、これから先の日本市場がどう考えても縮小傾向にある事を考えると、我々も好むと好まざるとに拘わらず海外マーケットを視野に入れたビジネス展開を考えねばなりません。欧米に居並ぶ先行他社にキャッチアップするよりアジア圏にフォーカスした方が強みが出しやすいでしょうから、アジアの各国には成長してもらわなければなりません。日本のノウハウでその国の発展に貢献出来るなら、それは我々にとっても成功なのです。



「まず与えよ、さらば道は開かれん」



色々考えさせられる旅でした。

幸せに生きる三原則

息子が小四になりまして、そろそろ複雑な感情の処理やら、自我との葛藤やら、難しいテーマが出てくるお年頃です。子育ては親育て、つくづくそう思います。子供の成長に向き合いながら、自分自身の成長を促され、日頃目を向けない自分の弱さや嫌な部分を直視せざるを得なくなります。子供に語りかけながら、それは果たして自分は出来ているのだろうかと反省しちゃったり。思うのは、世の中の大事にしなきゃならないポイントってそんなに沢山はないし、子供でも大人でもあんまり変わらないものなんだな、という事。私が日頃思っているのは、



・約束を守る

・間違ったら謝る

・周囲の人を幸せにする



この三つくらいなんですよね。で、この三つが出来れば、それ以上は要らないんじゃないかと思ったり。約束を守る事は、逆に出来ない事は約束しない事を意味します。一度した約束を実現するために継続的な努力が必要になる、という事もありますよね。間違ったら謝る、というのも、謙虚に人の意見に耳を傾けなければ出来ない事です。最後のは、自分が幸せになりたければ、まず周囲の人を幸せにしてあげるべきだ、と思っています。どれだけ沢山の人に良い事をしたかで、本人に返ってくる幸せの量が決まるんじゃないかな、と。



あ、これがちゃんと出来てれば神様なので、現実は毎日反省しきりです…。いつか私のBLOGを息子が読む日が来るかな、なんて思いながら書いてみました。

決断力

ソフトバンクのUSスプリント買収が公式に発表されましたね。久し振りに見るアグレッシブなニュースで、嬉しかったです。スプリントの経営は決して順風ではなく、インフラもソフトバンクの既存ネットワークと互換性がありませんからリスキーな買収という声もありますが、決断した孫さんを凄いと思います。考えてみれば、旧vodafoneを買収した時も同じようにリスキーで成功確率低いと言われていたはず。今日のSoftbankの隆盛を見れば、正しい経営判断であった事は明確です。



こういう決断力のあるスケールの大きい経営者が少なくなってしまいました。創業オーナー社長が減って、サラリーマン経営者が増えちゃったんですね。個性的で活躍が目立つ経営者と言えば、柳井さんとか、稲盛さん、永守さん、三木谷さん、渡邉美樹さん、堀義人さん、などなど皆創業者です。



個人的に、人を動かす最大のエネルギーは”怒り”だと思っています。感情を表に出すのが憚られる現代ではあからさまに怒りを表現することは難しいのでしょうが、旧世代の経営者の創業のモチベーションは生まれ育った貧乏な環境や周囲への怒りだった事が多いはず。満たされた良い時代に産まれた若者が、あまりエネルギッシュな大志を持たないのは仕方がないのかも知れませんね。



乱暴な意見ですけど、私はもっと大企業を倒産させるべきだと思います。「Too big to fail」なんて言ってないで、ダメになった企業は市場から退場させる。そこで抱えていた人材が放出される。勿論短期的に痛みは生じますけど、そこで人材の流動性が生まれ、一定数が起業に向かう。これが健全な社会活力の生み出し方なんじゃないでしょうか。社会全体がソフトランディングを志向しすぎて膠着状態に陥っている。それが日本の病状だと思います。外科手術が必要なんですよね。日本という国のあちこちに。

コンプライアンス不況?

最近の日本を見ていて、根が深い問題だなと感じたので書いておくことにします。いわゆる”コンプライアンス”とは法令準拠を差しますが、改めて定義を見てみると、
企業が経営・活動を行ううえで、法令や各種規則などのルール、さらには社会的規範などを守ること。一般市民が法律を遵守することと区別するために、企業活動をいう場合は「ビジネスコンプライアンス」ともいう。



 もともとは1960年代に米国で独禁法違反、株式のインサイダー取り引き事件などが発生した際に用いられた法務関連の用語であるため、「法令遵守」と訳されることが多いが、英語のcomplianceは「(命令や要求に)応じること」「願いを受けいれること」を意味し、近年では守るべき規範は法律に限らず、社会通念、倫理や道徳を含むと解釈される。(出典)
とあります。先進国家に生きる我々は法治に従うべきでルールは守って当然ではありますが、最近どうもこれが行き過ぎなのではないかと感じる時があります。何か新しい事を始める時に、真っ先に粗探しをしてしまう。結果として瑕疵を潰すことにばかりパワーを費やしてしまい、その新しいアイデアが形になるのが遅れるばかりか、出来上がったものが当初想定していたイメージからかけ離れた非常に面白みのないものに堕してしまう。身の回りにもよくある事だと思いませんか? 本田宗一郎がバイクを作り始めた時、厳密にコンプライアンス基準をあてはめていたらスーパーカブは世に出なかったかも、なんて考えちゃうのです。誤解を恐れずに言えば、新しいビジネスって、どこか”怪しい”ものなんじゃないでしょうか。今まで重視されなかったニッチなマーケットに向けて、今までなかった製品・サービスを提供するんですから、それが当然だと思うわけです。それを前例がないからとか、安全性が証明されていない、なんて言い出すとせっかく芽吹いた小さい芽が摘まれちゃうんじゃないでしょうか。いわゆる同調圧力に潰される。



これはしかし難しい問題で、日本社会の良さや特性を出している基がこの同調性だったりするわけで、そこを垣根を取っ払って行け行けドンドン社会になったら、それはもう日本ではありません。移民は一定の制限を加えないと、日本のカルチャーが壊れちゃいますもんね。そう考えると、日本社会に活力を取り戻すというのはかなり難しい舵取りが必要になります。アメリカはそこを掛け金を釣り上げた超資本主義ルールと移民奨励で突破している訳ですし、中国やロシア・ブラジルなんかの新興国は規制が緩い。日本が日本の良さをキープしたままでどう頑張れば良いのかとなると、小判鮫商法で他国で芽が出た新商品・サービスをなるべく早く取り入れる努力をするか、グローバルに展開する日本企業がまずルールの緩いマーケットで試してみる、なんて事が必要なのかな。夢のない話ですけど。



社会が成熟して、秩序が整って安定すればするほど活力は低下するものなのだとしたら、日本が追うべき経済活性化とは非常に困難な二律背反なのかも知れませんね。そんな難しい事を今の政治家に期待出来るはずもなく、やはり民間セクターが個別に努力するしかありませんか。日本国内だけでなく海外マーケットに目を向ける、外で多めにリスクを取る。それが日本企業に必要な行動指針なんでしょうね。内にこもっている時代では無いということで。