「自炊」とDRM

ビジネスマンのための書籍スキャン入門ー既に始まっている電子出版



「自炊」っていう言葉、ご存知でしたか?

自分で書籍をスキャンして電子データ化する行為を指すのですが、何となく言葉に込められている一抹の後ろめたさとか暗さが、昔の音楽データのMP3化を思い起こさせませんか?

音楽のデジタル配信サービスが登場した時、当初音楽業界はこぞって海賊版の氾濫を恐れて反対しました。

そして厳密な著作権管理の仕組みを求めてDRMを実装しました。

それが何をもたらしたか。

よりヒドイ海賊版の広がりです。



Appleのアプローチは違っていました。

「より簡単に支払が出来、充分に安価な価格設定をすれば、誰も人の権利を盗んでまで音楽をダウンロードしたりはしない」という哲学で、基本的にはDRMを掛けずに一曲100円程度の価格設定でiTunes/iPodを世に問うたのです。

その結果どうなったかは皆さんご存知の通り。



何だかその音楽業界の轍を出版業界がわざわざ踏もうとしているように見えます。

上記のように「自炊」してまでわざわざコンテンツの電子化をする人が相当数出てきている状況で、いつまでも頑なに電子出版に背を向けていては海賊版コンテンツが氾濫する様になるのは火を見るよりも明らか。

前向きな対策はただ一つ。

業界自身が積極的に電子コンテンツの出版・流通を進め、閲覧に複雑なDRMを必要とせず、手軽にお金を払える安価な流通マーケットを整備する事です。

それがAppleでもAmazonでも良いじゃないですか。

自分達の強みはコンテンツの発掘と育成・プロモーション・流通にあるはず。

旧時代の仕組みに合わせた無駄なコストを削減して筋肉質な組織を作り直し、強みにフォーカスして柔軟に新しい環境に適応する。

新しい時代が来たんですから、新しい時代の振る舞いを積極的に模索していくべきなんですよ。



思い切って、社内の若手にプロジェクトを任せてみて下さい。

今試されているのは、業界・会社の懐の深さですよ。