リモートワークの導入について

エンジニアが働きたい場所で働けるために、チームに必要なこと

これは今ウチで顧問をしてくれているサイボウズの岡田君の資料ですが、リモートワークの導入を考えている全ての企業にとって役に立つ内容だと思います。リモートワークに興味はある、導入してみたいと考えている、でもどこからどう手を着けていいのかわからない、ヘタな導入の仕方をして混乱を招きたくない。多くの方はそうお考えのはず。私も同じです。

大事なのは、何のためにリモートワークを導入するのか、という目的ですね。私が思うメリットは、生産性の向上と優秀な人材の確保の二点です。

まず生産性の向上という観点ですが、そもそもオフィスは本当に効率的に仕事に集中出来る場なのか、という疑問があります。オフィスで働いている毎日を客観的に眺めてみると、大小様々な割り込みでブツブツ時間が切れていることが分かります。電話、メール、チャット、LINE、会議、打ち合わせ、そして誰彼なく話しかけられる。本当に落ち着いて仕事に取り組んでいる時間が一日にどれほどあるのか。正直なところ、真剣に考えをまとめたい時は私自身がカフェに移動して集中したりしていますからね。暗黙知の共有という面があることは否定しませんが、こと作業に集中したい、アウトプットを出す、という観点からはオフィスはあまりにノイズが多すぎます。その時その時の目的に応じた最適な場所で仕事をする、というのは選択肢として有用だと思います。

更に分かりやすいのは、優秀な人材の採用という点です。これはもうエンジニアを採りたければ、必須条件になりつつあると感じています。他社が対応を始めている以上、こちらもその環境を用意しなければ永遠に良い人にリーチできません。これはウチのようなIT企業だけではなく、今後どんな企業にとっても他人事ではありません。

この二点を求めてリモートワークを導入したいと考えていますが、そのデメリットにも目を向けないわけにはいきません。先の岡田君は下記の点を問題点の例として挙げています。

・チームの作業効率低下
・情報漏洩リスクの増大
・心身への悪影響
・マネジメントの難易度向上

つまり個人の効率は向上するかもしれないけど、それはチームの効率低下とのトレードオフではないのかという懸念ですね。チームメンバーが顔を合わせてのコミュニケーションは減りますから、ちょっとした軽い相談や雑談レベルの交流は少なくなるでしょう。人間関係の構築ができていないのにリモートで顔を合わせなかったら、どこで関係を作るのかその場がないかもしれません。リアルなチームミーティングをする場にはどうしても出席しないと疎外感も生まれそうですね。

低レベルかもしれませんが、「サボってるのではないか」という疑問は誰もが真っ先に思うポイントです。大事なことです。これについては、そこはあきらめる、が正解のようです。驚かれました? でもこれ、ごもっともなんじゃないかと思っています。だってオフィスにいてもサボる人はサボりますよね。防ごうと思えば四六時中監視するしかない。でもそんな職場で働きたいですか。私はイヤです。それよりも、目の前の仕事に価値を感じていて、会社に愛着があり、メンバーの信頼を裏切りたくなければ、自然に働きますよね。この共通の価値基盤がない会社にはそもそもリモートワークは向かないということなのでしょう。私は子どもに向かって宿題しなさいとうるさく叱る親の姿をイメージしました。小学生レベルには必要な関与かもしれませんが、高校生以上になればそれはもう自分の問題です。ましてやいい大人なのですから、働く意味を見出せない職場なのならそれは真面目に転職を考えるべきなんじゃないでしょうか。

先の岡田君はリモートワークをうまく機能させるには三つの条件が必要と言っています。それはツール、制度、風土の三つ。この中で一番大事なのは、最後の風土なのでしょう。多様性を尊重し、公明正大で嘘を付かないこと。だからこそ、チャットツールやTV会議システムを入れたらできる、というものではない。結果的に社内がバラバラでチームが崩壊した会社もある。扱い方を間違えるととんでもないことになる劇薬。それでも未来のオフィス、未来の会社を追い求めるなら避けては通れないもの。それがリモートワークなのだと思います。まずは条件を幾つか設定して、スタッフみんなが納得して進められるやり方で試してみようと思っています。