飲食業界の奥の深さ

捨てた魚は、高級フレンチだった ー 【最終回】新しい魚流通の仕組みを模索



これ、色んな意味で示唆に富んだ面白い記事だと思います。

いつも思うのですが、「既にある大きなマーケットの周辺にチャンスあり」と言うことです。

全く新しい製品・サービスを開発するのも尊い行為ですが、誰も知らないプロダクトは市場での認知を得ること自体に時間が掛かります。

それに引き換え、飲食のような巨大な産業で埋もれているニーズを上手く汲み取ることが出来れば、この様に短期間で大きな成果を出すことが可能です。

それにしても、捨てていた雑魚が高級フレンチで重宝される食材に化けるとは!

これも現場を知るシェフが直接市場を見に行ったからこそ得られた発見ですから、現場にヒントが隠れているというのはどこの世界でも同じですね。



ちょっと本筋から外れますが、上記の記事中に

「そもそも伝統的なフランス料理は、“決まった魚種”だけ調理していたんですよ。冬になるとヒラメ、夏はスズキ、あとは舌平目とか。フランス現地でも、本当に5種類ぐらいしか使われていなかったんです」(能勢)。



 そこには、フランスの物流事情が関わってくる。その昔、道路網が整備されておらず、冷凍技術も発達していなかったために、鮮度を維持したままでレストランに届けることができない。素材を活かした調理が難しく、ソースを主体にせざるを得なかった。



 そんなフランス料理を変えようと、最先端の取り組みを続けているのがシェ松尾である。30年ほど前、それまでは前菜・メイン・デザートくらいの構成だったフランス料理を、創業者の松尾幸造が日本の懐石料理を思わせるコースとして仕立てた。当時は「え、こんなに長いコース?!」と驚く人も多かったそうだ。



 そこには、日本ならではの素材がふんだんに盛り込まれた。「コース料理の中で、肉はメーンディッシュくらいですからね。そのほかは、前菜などでもほとんどが魚介を使っています。最近で言えば、うちでは下田で揚がる伊勢エビを前菜で出したりしていますね」と能勢は話す。



 この“素材ありき”の発想は、本場フランスに逆輸入されており、大きなムーブメントになっている。そこでは魚という素材が重要な役割を果たしているという。



 その現れの1つと言えるのが、ここ20年ほどでフランスに魚介のみのレストランができたことだ。「ミシュラン」の星を持つ店舗もある。日本に招かれたフランス人のシェフたちが、日本料理店などで「日本にはこんなにいろいろな魚の種類や調理法があるのか!」と驚き、それを取り入れていった結果なのである。


という下りがあります。

こういうのを読むと、日本の食文化、和食に限らず日本で目にして接することが出来る全ての飲食文化って、世界にインパクトのある凄いコンテンツなのではないか、と思います。

あのプライドの高いミシュランがあれだけの星を日本市場に付与する事が、その評価の表れですよね。



モノ作りの実力がどんどん劣化して20世紀の成功ストーリーが昔話のように思える昨今、実は「食」というある意味最も生活に密接していて誰もが対象となる幅の広い産業が、メイド・イン・ジャパン復活の良い切り口になり得るんじゃないかな、なんて考えちゃいました。