アジア地域の成長はどこまで続くか

日経新聞に、インドの自動車市場に伸び悩み傾向が見られる旨の記述がありました。最近中国も成長速度に陰りが出ていますし、世界の成長セクターと見られてきたアジア地域にもそろそろ成長の限界が見えてきた気がします。



確かに発展途上国である各国が、グローバル化の恩恵を受けて経済発展するのは自然な流れです。しかし、日本が戦後に遂げた高度成長と同じ成果を得られるのかと問われれば、それは大いに疑問だと思うのです。確かにシンガポールレベルの小国であれば、気の利いた為政者の政策で軟着陸出来るかも知れません。しかし、中国・インドクラスの大国にそれが可能なのでしょうか。日本は、明治維新の前から既に世界に冠たる経済活動と高い教育水準を実現していました。いわば、先進国としての基盤が既にあったのです。産業革命による先端の工業技術を導入するだけであっというまに世界の列強に仲間入りしたことは、白人中心の西洋社会には驚きでも私には当然の結果に思えます。



中国の政治体制がいびつである事は周知の事実です。資本主義経済と、一党独裁体制はどう考えても馴染まない。中国共産党の腕力でなんとか押さえ込んではいますが、いずれ民主化プロセスを経なければならないでしょう。その過程を混乱無しに乗り切れるのか、はなはだ疑問です。インドも同様に格差社会の矛盾を抱えています。30年現地に馴染む努力をしてきて成果を出したはずのスズキでさえ、暴動を押さえられないのが事実です。両国共に、本当の先進国への道は多くの人が考えるより困難な気がします。



イス取りゲームに乗り遅れまいと、各国の企業がブルーオーシャンを目指してアジア地域に進出しています。先行したシンガポール・香港、更にはマレーシア・タイ・インドネシア・ベトナム・ミャンマーetc.。確かにあるレベルまでの発展は約束されていると思いますが、あまり将来にバラ色の期待を掛けるのはどうなのでしょうか。今の時代、中間段階への発展はある意味簡単なんですよね。資本を入れて、水道や道路や鉄道や通信などの社会インフラを整備し、街をモノで満たしてやれば良い。一番変化しにくいのは、人の頭の中です。一度植え付けられた価値観や趣味・嗜好は、後から変えることは困難です。結局下の世代に世代交代する事でしか人の行動が変わらないなら、国全体の成熟に時間が掛かるのは当たり前なのです。中間段階の発展から、本当の先進国になるために必要なステップ、民主化や人権意識や無形の創造物に対する権利保護意識などを身に付けるのは簡単ではないと思います。



アジア向けのビジネスプランは、長期的なタイムスケジュールに基づいて立てないとダメなんじゃないでしょうか。30年、50年経っても、日本レベルに到達する国はあるのかな? 良い方に見通しが外れてくれれば、それはHappyな事なんですけど。