「とてつもない日本」

たまたま書店で見掛けたので手に取って読んでみたところ、冒頭の前書きが気に入って購入。

インドへのODAで地下鉄を建設した際の、日本人技術者の影響についてのエピソードでした。

時間厳守の感覚、働くことの価値観、労働の美徳、といった文化的側面こそが一番大きなプレゼントであった、という現地の地下鉄総裁の言葉は感動的です。

(ちなみにこのプロジェクトは、納期二ヶ月半前倒し、開通後の運航も数分単位の誤差で運営され、驚くべき成果を上げているそうです)



つまり、我々日本人が当たり前と思って行動している事が、いかに海外では普通でないか、その凄さをもっと日本人自身が認識すればもっと未来を明るく語れるのでは、という提言に満ちています。



例えば、イラクのPKOについても、サマワへの駐留期間中に婦女暴行・脱走兵・無銭飲食といった非行は一切無く、一人の犠牲者も出さず、一発の実弾を撃つこともなく撤収を完了した。

更に日本のPKO活動の内容そのものが、現地のニーズを徹底的に汲み上げることに注力し、道路の修復・飲料水の確保・電気の開設・医療活動といった地域の要望を、”イラク人と一緒に”やり遂げた、と。

このイラク人と一緒に、というのが大事で、ブルドーザーなどの重機の使い方や病院・学校の建設・オペレーションといったノウハウは、自衛隊撤収後も現地に残ります。



最終章では、「麻生ドクトリン」としてアジア重視の未来を描いています。

2030年までに、中国とインドの人口は15億人に達し、これに2億人超のインドネシアなど周辺諸国を併せると、アジアの人口は世界の半分以上に達することになる。

これはつまりアジアが21世紀に世界の生産と消費の中心になることです。

そして麻生さんの提言は、

明日からできることは、今日までやってきたことと、少しの違いもない。

それはすなわち、懸命に働くこと。知識や経験を分かち合うこと。成功と失敗の体験を共有するため、機会をとらえて対話を重ねていくこと。その中から、政治でも経済でも、ベストプラクティスを互いに学びあっていくことーー。これらがアジアを今日のアジアにしたのであれば、明日から私たちにできることも、これらと変わるところはないのである。


今までやってきたことが間違いじゃない、これからも同じ事を続けていけば良い、というのは大変勇気が出る言葉です。

政治家の役割がよりよい未来に社会を誘導する事なら、こういう明るい展望を見せてくれることは大事なことですね。