クルマ雑誌の在り方

Bagnole Online



注目していた電子クルマ雑誌「Bagnole」が休刊してしまいました。2010年10月号が創刊ですから、結局5号しか出なかったんですね。我々も創刊を準備していますので、他人事ではありません。敗因を分析してみましょう。



1.対応プラットフォーム

 同誌は基本的にiPadにしか対応していませんでした。確かに現実問題としてAndroidタブレットは種類こそ多いけど市場シェアを全く取れていないので、無視して正解だと思います。問題はiPhoneに対応しなかった事だと思います。国内のiPad販売台数が約50万台程度と言われていますが、片やiPhoneは250万台以上と言われていますので、画面の小ささという問題があるにしても、対応しておくべきだったでしょう。



2.資金

 発行元も、当初の市場の小ささと認知度の低さは分かっていたはず。ならば、少なくとも一年程度は販売を継続出来るだけの見通しを立てておくべきだったのではないでしょうか。塩見編集長のコメントからも休刊の原因は資金だと明言しており、要するに計画通り売れなかったのが問題だったのでしょうが、それを誤算というのはあまりに稚拙です。



3.コンテンツ

 これはBagnoleに限った話ではありませんが、最近のクルマ雑誌は私のようにクルマに非常に興味がある人間でさえ購読意欲を掻き立てられません。これで誰が買うのでしょうか? 原因ははっきりしています。広告クライアントへの配慮に記事が縛られすぎているのです。基本的に新車は全部ヨイショ、誰もはっきりダメ出ししない。記事も新車に偏向していて、しかも出てくるクルマがエコだとか環境対応だとか、とにかく楽しくない。読者は環境意識の高い節約家じゃなくて”クルマ好き”なんですから、ミスマッチもいいとこです。大体編集者自体、自分の記事を面白いと思ってないんじゃないですか? 一番の敗因は、コンテンツでしょうね。



私は今のクルマ雑誌編集者、それにクルマの作り手に、声を大にして言いたい。あなたたちの提案は全く面白くない! 分かり易く言うと、クルマは既に商品として二極化してるんですよ。実用性領域のラインナップと、趣味性領域のラインナップに。で、特に日本車は出てくるクルマが軒並み実用性領域のクルマばっかり。売れればミニバンしか作らないんですか? そりゃ電気自動車とかエコカーが、会社全体としては大事なのは分かりますよ。でもばっさり趣味性領域のラインナップを切り捨てて、コアなクルマファンはどこに行けば良いの?



だから、今昔からのクルマ好きは、旧車に走るんですよ。国産・輸入車関係無く、昔のクルマを探して、大事に乗ってます。そのクルマを通じた気の合う仲間との楽しい時間を大切にしています。本当は新車でも、そういうクルマ好きに訴求するモデルが沢山出てきて欲しいけど、無いからしょうがない。いや、一部はありますけどね。国産ならマツダ・ロードスターとか、輸入車でもFIAT500とか。でも少ないんですよ。だから、マーケティング的には、実用性領域のクルマと趣味性領域のクルマは、全く別物と理解して戦略を分けて欲しい。両方一緒にするから、引き摺られて全部面白くなくなるんですよ。



私達は、純粋に趣味としてクルマに乗ることを楽しむ、クルマ好きのためのメディアを作りたい。クライアントに媚びず、読者に阿らず。近いうちにお目に掛かれることを楽しみにしています!