経営者に求められるのは、人格か、業績か

私は、業績だと思っています。「人間として凄く尊敬できるけど、業績はイマイチ」「人としてはダメだけど、業績はいい」どちらが有能な経営者かといえば、後者ですよね。昔の経営者は人徳経営を志向するところがあり、松下幸之助、本田宗一郎、井深大、盛田昭夫、稲盛和夫、あたりまではその流れだったと思います。しかしデジタル世紀を迎えるにあたって、そこの常識も変わってきたように思います。

スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグが人格的に褒められたものではないのは周知の事実。でも圧倒的な結果を残すことで栄誉に浴してきました。これはデジタル技術の特性にも関係があると思います。つまり、昔は一兆円企業を作ろうと思えば数十年の月日が必要でした。カタチのあるプロダクトを開発して、販売組織を作り、グローバルに規模を追うのにどうしてもそれだけの歳月が必要だったのです。それがいま、ヒットするプロダクトを作れば、非常に短期で世界を制覇することができてしまいます。Google、Facebook、Airbnb、Uber、全部そうですよね。こうなってくると、経営者として人格を磨くよりも、デジタルの特性を理解して適正なビジネスモデルを組み立て、マーケティングプランを実行できる有能さの方が大事になってくる。これは善悪ではなく、必然です。

日本ではまだここのデジタルのエコシステムがアメリカレベルには機能していないので、大成功した先例が少ないのです。メルカリが先鞭をつけてはくれていますが、まだ物足りない。サイバーエージェントや楽天は日本というローカル市場から出れていない。本当の意味でグローバルマーケットで評価される日本企業が不足しているのです。これがもっと沢山出現してくれば、日本にもシリコンバレー的なベンチャーを目指す若者経営層とそれを育成するエコシステムが整備されていくと思います。そのためには、誰かが先行事例を作らねばなりません。日本というある意味恵まれた小さなマーケットの成功に満足せず、本気で世界を目指す志が必要です。どこまできるか、私も挑戦してみたいのです。