地方はクルマ社会

若者のクルマ離れ、とよく言われます。ある意味事実なのでしょう。少子化の影響もありますし、長く続くデフレ経済の下ではこれだけ維持費がかかるクルマの所有コストが割高に感じられるのは当然です。しかし、都市部と地方の視点の違いも意識する必要があります。メディアは全て東京発信ですから、地方の実態と生活感を正しく反映しているとは言えないからです。

私の実家は三重県津市。今でこそ県庁所在地ですが、これは市町村合併で津市に併合されただけで、元々は一志郡一志町というド田舎です。最寄りの電車は近鉄ですが、もう何年も前に無人駅になってしまいました。電車を使うのは離れた学校に通う高校生と一部のお年寄りだけで、基本的には日々の移動手段はクルマです。だから各家に大人の頭数だけクルマがあります。殆どは軽自動車ですけどね。歩いて行ける範囲にコンビニもなく、一軒あったスーパーも潰れてしまいました。こうなると食品の買い出しだけでも大変です。役所が買い出しバスを無料運行してくれてはいますが、それも週に二便だけ。それではとても間に合わないので、年寄り世帯にはクルマがないと本気で生活がなりたたないのです。ウチの親父も少々危なっかしいのですが、やっぱりクルマは手放せません。ネットショッピングなんて現実的じゃありませんからね。

クルマの免許がないと、仕事もない。それでは家計が成り立たない。免許の取り消し、イコール、生活の危機。これは地方にいないとそこまでの切迫感を感じられないのではないでしょうか。

この大雨で、公共交通機関はマヒ状態に陥ってしまいました。JR・私鉄は全部ダメ、高速道路もダメ、でも唯一動いているのは地道です。都市部はともかく、地方の場合は最後の交通インフラのキモはクルマなのです。

ここで問題なのは、高齢者の運転です。80代も中盤以降に差し掛かると確かに危なっかしいのですよね。ご本人はまだまだ大丈夫とお思いでしょうが、家族はヒヤヒヤです。実際問題として先に挙げた生活に支障が出るので、クルマを使うなとも言いづらいところがあります。こういうのを見ると、本気で自動運転車が普及して欲しい。ただねぇ、世間の期待ほど早くは実現しないのではないかとも思えます。結局のところ、イレギュラーケースをどこまで許容するかという問題ですよね。確率98%を99.5%に上げるとか、そこに膨大なコストが生じる。現状でも90点のシステムはできていると思います。でも路上駐車や道路工事や子どもの飛び出しなど、想定外のケースって一杯あります。全てに完璧な対応を求めると、たぶん永遠に自動運転車なんて提供できないと思うのです。せめてバスレーンを設けて、自動運転バスだけでも導入したいですよね。それで地方の生活インフラは随分助かりますから。一日も早く社会のコンセンサスが成立することを願っています。