なぜ若者はアナログに向かうのか

富士フイルム「チェキ」エモさに支持、売上高1500億円へ

カメラやってると肌感覚で感じるのですが、若い人にアナログフィルムが人気です。富士フィルのチェキはずっと昔からエモいと評判でしたが、お手軽カメラに飽き足らず本格的なフィルムカメラ、それも一眼レフタイプ、なんかを使う若い人は増えています。このスマホ全盛の時代に、どうして不便なフィルムカメラなんか使うのでしょうか。その答えは、”不便”というキーワードにあります。つまり現在はあまりに”便利”になりすぎたのです。

便利とはどういうことなのかよく考えてみましょう。何枚でも気にせず撮れる、撮ったものがすぐその場で見れる、いかようにも加工で盛れる、すぐにSNSに投稿できる。これは一見素晴らしいメリットに見えるのですが、反面大きな弊害もあります。枚数気にせず大量に撮れる写真は一枚一枚に重みがなく、深い想い入れも持てません。限られた枚数のフィルムを使うには、本当にこれがシャッターを切る価値がある対象なのか、と毎回毎回自分に問いかけることになります。当然慎重になりますし、同じ撮るなら価値のある画にしたいと工夫もします。結果として一枚に込めた想いが深くなるのです。撮ったものがその場で見れるのはいいことにしか思えませんが、それが現像から上がってくるまで確認できなかったとしたどうでしょうか。本当にちゃんと撮れているのか、思ったような画になっているのか、ドキドキするんです。このお預け感がいいんですよね。今どきの若い人は待たされることに慣れていませんから、待たされる分その時間がとても貴重なものに思えるし、結果撮れたものに愛着も湧きます。そしてアナログ写真は加工できません。だからこそ自分の想像以上の出来映えの写真には心底嬉しくなって、やったーと叫びたくなるんです。もちろんガッカリすることもあるんですが、写真を一枚撮るだけでこんなに一喜一憂できるなんて、とってもいい体験ですよね。

工業社会は手間と労力を省いて効率を上げる方向に進化してきましたし、これからもそうなんですが、結果としてその手間と労力をかける工程にとても価値が出ているわけです。面白いギャップですね。同じことがカメラ以外にも拡がっていて、古いクルマやヴィンテージファッション、家具や雑貨、古民家のリノベーション、など、センスのある若い人の興味はどんどんアナログに向かっています。だってAIで簡単に作れるフェイク画像見てても誰も感動なんかしませんからね。簡単に再生産できるデジタル全盛時代だからこそ、手間のかかる手作りのアナログ感が大切になる。これは今後の大事なキーワードですね。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次