民主主義は独裁制に負けるのか

「民主主義は最悪の政治形態である。ただし、これまで試みられてきたすべての政治形態を除けば。」
(”Democracy is the worst form of government – except for all the others that have been tried.”)

ウィンストン・チャーチル

歴史を振り返っても、統治システムは集中、即ち帝政や独裁制と、分散つまり民主主義制、の間を揺れ動いています。世界に民主主義が定着したのは第二次大戦後の話で、それほど昔の話でもありません。民主主義が衆愚政治に陥るリスクはローマ時代から繰り返し指摘されており、それは現代でも大きな制度上の瑕疵と言えるでしょう。それでも世界の先進国と呼ばれる国が民主主義を採用してきたのはなぜか。直接的には先の大戦への反省でしょうね。もう一つ大きな流れとしてあるのは、やはりネットの普及でしょう。ネットにより、かつてないレベルで個人の人権意識が高まった。結果として世の中にはコンプライアンス主義が横行し、正論に誰も反論出来ない風潮が出来上がってしまいました。国際政治の場を除いては。

一国の制度の中ではコンプライアンス主義が横行するのに、どうして世界の政治はこんなに混沌としているのか。それは世界を統治する暴力装置が存在しないからです。国内なら治安を揺るがす行動は警察や軍隊が沈静化させます。裁判と相まって、それは国家権力の分かりやすい発露です。しかし国際政治にはそんな警察も軍隊も存在しない。そこにあるのは、徹底した各国の利害に基づいたリアリズムだけです。弱肉強食、勝つか負けるか。力の強い者が正義。左派は見たくない現実ですよねw

21世紀は、アメリカと中国の覇権争いが正面から衝突する時代です。アメリカのヘゲモニーが80年程続いてきたのですが、その勢力図が今大きく変わろうとしている。その流れを作ったのは他でもないアメリカ自身なのですが、もう時間の針は戻せない。世界中が中国の生産能力に依存するグローバルサプライチェーンを構築してしまった以上は、今さら中国を経済の枠組みから除外することなんてできない。人口で大きくアメリカを上回り、経済発展のポテンシャルはまだまだある。遠からずGDPではアメリカを抜いて世界一の座に着くでしょう。その時世界はどうなっているのか?

アメリカも馬鹿ではないので、そう易々と没落はしないでしょう。その思想的に自由な体制が世界中から才能を集め、イノベーションを起こし続ける。結果として世界一の実験場として価値をキープする。そこは10年後も変わりないと思います。ただ、量産品のボリュームを創り出すという点ではもう中国には適わない。ITや金融の重要な先端技術を押さえるアメリカ対世界の製造工場である中国の対立。この構図は変わらないと思います。この時、他の国々はどういう態度を取っているのでしょう。

一番賢いのは、どっちつかず、ですよね。アメリカにも中国にも良い顔する。実はこれ、日本の得意技ですw 今だって安全保障ではアメリカにどっぷり依存しながら、ちゃっかり中国と貿易上の重要な関係を深めている。これでいいんじゃないですかね。どこの国だって、本音では喧嘩なんてしたくない。商売に徹して、自国が発展することが願いです。だからアメリカと中国の自陣営への引っ張り込み合戦に、明確な答えは出さない。持ち帰って検討します、善処します、でいいと思います。

中国もこのまま永遠に発展するとも思えない。確かに手続きが煩雑で意志決定が遅い民主主義国家よりはスピーディに動けるでしょうが、それでも人は必ず歳を取る。そして保身に走る。習近平だって必ず国の発展の妨げになる時が来るはず。そしてその時、綺麗に交代する仕組みを持たない中国は、権力争いと混乱を避けられない。そこでまた暗黒の数十年が待っているのです。それは中国四千年の歴史で繰り返し見られた風景ですよね。民主主義は最悪の統治システムですが、独裁制が正解というエビデンスもまた歴史に存在しないのです。

日本はこれまで通り、高みの見物です。のらりくらりと美味しいもの食べて暮らしましょうw

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