もう一つのスティーブ・ジョブズ物語り

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

今やレジェンドになったスティーブ・ジョブズですが、カリスマの人間的な一面が垣間見れるIT業界人必読の書です。物語の始まりは1994年の一本の電話から。Appleを追い出され、再起を懸けてチャレンジしていたNeXTもPIXARも迷走続きで結果の出ない日々を送っていたジョブズがスカウトしたのが筆者であるローレンス・レビー。この一人のCFOが驚きの成功をもたらすストーリーには、どんなフィクションも及ばないリアリティと興奮があります。意外だったのはジョブズの素顔です。

すごいアイデアも出てくるけど、的外れも少なくないんだ
スティーブの打つ手は何でもビシビシ結果が出ていた気がしていますが、それは成功したあとに振り返っていい場面だけを拾うからバイアスが掛かっているんですね。思い返すと、SONYにおける盛田昭夫さん、ホンダにおける藤沢武夫さんのように、偉大なビジョナリーの夢を形にしていく有能な実務家が成功には不可欠なのかもしれません。スティーブは何でも自分の思うようにしようという独善的なところがありますが、挫折経験を経てはじめて人の言うことに耳を傾けるようになったのかもしれませんね。
スティーブとは、いつもだいたいこんな感じのやりとりだった。大きな問題でも小さな問題でも、スティーブは激しい議論を展開する。議論は同意できる場合もあれば同意できない場合もある。同意できない場合、私は、彼が激しいから譲歩するのではなく、あくまで事態の打開に資するから譲歩という姿勢で臨む。スティーブも、自分の考えを押しつけるより、議論で互いに納得できる結論を出し、ともに歩むほうを好んだ。ピクサーにおける事業や戦略は、彼が選んだものでも私が選んだものでもなく、こういうやり方で得た結果だと思うと、何年もあとにスティーブからも言われている
有能な補佐役との出会いも望んで得られるものではないのだと思います。スティーブにはその縁を引き寄せるパワーがあったということなのでしょう。

実はPIXARは10年に渡り私費を5,000万ドルも投入しながら全く成果が上がっていない苦しい状況でした。カオスな状態から、当面のキャッシュの手当、何が収益を生み出す元となるのかの見極め、ディズニーとの交渉、IPOの道筋と実現、そしてバイアウトという着地。筆者の果たした役割はとてつもなく大きい。スティーブ・ジョブズ復活のお膳立てをしたのはローレンス・レビーだと断言しても過言ではないでしょう。

生の成功ドラマを読んでいると、本当にワクワクします。そしてそこに自分を当てはめてみる。自分にも同じことができるだろうかとイメージしてみる。身の程知らずなのかもしれないけれど、それでも思わなければ絶対に実現はしない。夢を追う人の背中をそっと押してくれる、そんな勇気をくれる本でした。

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