デフレ対策

「失われた20年」が30年になろうとしています。いつまで我慢しても上向かない日本経済。根本的に何かがおかしいと感じませんか? こんなに真面目な国民が、それなりに一生懸命頑張っているのに、よくなる気がしないというのは異常です。これは個人や個別企業の努力を越えたレベルで、何かが間違っているのでは、と思うのです。もし間違っているのなら、それは何なのか? おぼろげでもその答えを探してみたいと思います。

今回の総裁選挙で各候補者の政策を比較するにあたり、MMT(現代金融理論)と呼ばれている政策を自分なりに調べてみました。

中野剛志さんに「MMTっておかしくないですか?」と聞いてみた

かなりボリュームの多いエントリーですが、読み進めていくと段々話の骨格が見えてきます。いくつか大事な図表が掲示されていますのでご紹介。

これは経済記事でよく見かける、「日本の財政は危機的」という説明に使われる図です。日本の債務残高がギリシャやイタリアといったユーロの問題国より更に輪を掛けて悪いというのは皆さんよく聞かされますよね? MMTの議論を呼ぶポイントが、この債務残高を「日・米など先進国の自国建て国債のデフォルトは考えられない」と一笑に付すところです。これは確かに懐疑派の気持ちがよく分かります。普通の感覚だと、「幾ら借金しても問題ない」なんて直感的に受け入れられませんよね? 私もそうでした。そして財務省はここをしつこく強調してきます。「子供たちの世代にツケを残すのか?」「財政には規律が必要」「皆で痛みを分かち合い、我慢しよう」と言われると、良識のある大人ほど反対はできない。しかし、これ、本当なのでしょうか?

中野 たしかに、政府債務は積み上がっています。しかし、国家の経済運営を企業経営や家計と同じ発想で考えるのは、絶対にやってはならない初歩的な間違いです。なぜなら、政府は通貨を発行する能力があるという点において、民間企業や家計とは決定的に異なる存在だからです。


ここが、どうしても理解しづらいんですよね。本当に大丈夫なのか? 中野さんは、大丈夫、と言い切りますw
このオペレーションは無限に繰り返すことができるのです。しかも、このオペレーションを回す度に、国債発行額と同額の民間預金が増えていくわけです。つまり、国債の発行によって民間の金融資産を吸い上げているのではなく、財政赤字の拡大によって、民間で流通する貨幣量を増やしているということです。

――ところで、国債はいずれ償還しなければなりませんよね? つまり、将来世代にツケを回しているのではないですか?

中野 よく聞く話ですが、それも誤りです。「国債の償還財源は、将来世代の税金でまかなわれなければならない」という間違った発想をしているから、そういう話になるんです。だって、自国通貨を発行できる政府は永遠にデフォルトしないのだから、債務を完全に返済し切る必要などありませんからね。

 つまり、国債の償還の財源は税である必要はなく、国債の償還期限がきたら、新規に国債を発行して、それで同額の国債の償還を行う「借り換え」を永久に続ければいいのです。実際、それは先進国が普通にやっていることです。だから、英米仏などほとんどの先進国において、国家予算に計上する国債費は利払い費のみで、償還費を含めていません。ところが、なぜか日本は償還費も計上しているんですけどね……。

私にはこの中野さんの理屈を検証できるだけの知識がないので何ともなんですが、もし本当にMMT派の理論が正しいのであれば、日本の政策の足枷を嵌めている財務省は大きな誤りを犯しているのではないでしょうか。

MMTの突っ込みポイントとしては、財政赤字が際限なく増えていってしまうとハイパーインフレを招いてしまう、というところにあります。実はこれはMMT派は否定していないんですよね。
中野 ええ。自国通貨発行権をもつ政府は、原理的にはいくらでも国債を発行することはできますが、財政赤字を拡大しすぎるとハイパーインフレになってしまいます。だから、財政赤字はどこまで拡大してよいかと言えば、「インフレが行きすぎないまで」ということになります。したがって、財政赤字の制約を決めるのはインフレ率(物価上昇率)だということになります。


つまり、現実的なインフレターゲットを実現するまでの限定的な措置である、と。まあ、それなら一定の節度のある理屈であると言えそうですよね。安倍政権下の黒田日銀は、2%程度のマイルドインフレをターゲットに”異次元の量的緩和”を実行したわけですから、そこまでは既に日本政府は意志決定をしていると言えます。では、なぜその異次元緩和が効果をもたらせなかったのか、そこがポイントです。

中野 財務省も主流派経済学者もマスコミも、「日本の財政赤字が大きすぎる」と騒いでいますよね?しかし、財政赤字が大きすぎるならば、インフレが行き過ぎているはずです。ところが、日本はインフレどころか、20年以上もデフレから抜け出せずに困っているんです。おかしいと思いませんか?

――たしかに……。

中野 つまり、日本がデフレだということは、財政赤字は多すぎるのではありません。少なすぎるんです。

うーん、確かに。財政規律派の言うとおり、際限ない財政赤字は確かに危険なのでしょう。しかし日本の現実はどうですか。インフレの兆しなんてどこにも見えず、どこまでもデフレの泥沼が続いていて抜け出せないのが最大の問題ですよね。ということは、今の日本が財政規律を気にするのはちゃんちゃらおかしくて、やるべき手段は積極的な財政出動によるデフレ脱却なんじゃないでしょうか。

私がこの一連の中野剛志さんのエントリーで一番ショックだったのがこの図です。1995年から2015年の20年間で世界各国がこんなに成長しているんですよね。中国は1400%、アメリカは130%、世界の平均が139%なのに、日本だけがマイナス20%。そりゃ未来なんて見えませんよね…。では、どうすればいいのか?
――では、どうすればいいんですか?

中野 「大バカ者」がいればいいんですよ(笑)。

――は? 「大バカ者」……ですか?

中野 ええ。デフレ下では、節約するのが経済合理的ですから誰も消費・投資をしないので、需要と供給の差(デフレ・ギャップ)は絶対に埋まりません。だから、デフレなのに、とんでもない金額のおカネを使う「大バカ者」が登場して、デフレ・ギャップを埋めてあげなければいけない。その「大バカ者」を「政府」というんです。

――なるほど。民間主導ではデフレから脱却できないのだから、政府主導でやるしかない、と?

中野 そうです。要するに、政府が財政出動で需要を生み出して、デフレ・ギャップを埋める以外に、デフレから脱却する方法はないのです。先ほど私は、「デフレのときには、財政赤字に制約はない」と言いましたが、デフレのときに財政赤字に制約を設けると、デフレから脱却することができないと言うべきなんです。

 ここにも、ビジネス・センスでマクロ経済を論じる危険性があります。デフレ下においては、民間のビジネスでは節約が美徳であっても、その美徳を政府に求めたらデフレから脱却できなくなるからです。むしろ、政府は民間とは逆の行動をとらなければならない。デフレのときには支出を増やし、インフレのときには支出を減らすことで、経済を調整するのが政府の役割なんです。


この図が黒田バズーカが効果を出せなかったことの説明なんですが、つまりマネタリーベースを増やしただけでは市中におカネが出回ることには繋がらず、なんら有効な需要を生み出せなかったんですね。デフレ下においては民間企業は合理的な判断を下すが故に投資は起きず、このシチュエーションで需要の担い手をこなせるのは市場原理を無視した政府部門の公共投資しかない、と。実はアベノミクスは三本の矢で構成されており、1.大胆な金融政策、2.機動的な財政政策、3.民間投資を喚起する成長戦略、というのは何も間違っていない。むしろ、せっかく第一の矢で増やした金融政策を活かすだけの第二の矢、つまり財政政策を打たなかったために全てが無駄に終わった、という認識が正しい。アベノミクスを最後までやり切っていればよかったんです。これはやはりどこかで財務省がブレーキ踏んだんでしょうね。どこまでいっても財務省の財政規律ロジックがガンな訳です。

この図を見れば、確かに財政支出とGDP伸び率には相関が見えますね。

ここまで見てくれば、MMT派の主張が決してトンデモでも眉唾でもなく、至極まっとうな意見であることが分かってきます。確かに本当に彼らの言うとおりに成果が出るかどうかはやってみないと何とも言えないのですが、ここまでもう30年も日本人みんなが我慢してきたんです。試してみる価値はあるんじゃないでしょうか?

さて、次の総裁が誰になるかは分かりませんが、誰であってもこのMMT理論を試してみて欲しいと思うのです。やってみてダメなら改めればいいじゃないですか。いつまで財務省の言いなりになっているのでしょうか。個人的には、高市早苗さんに期待ですかね。この30年の閉塞感に一石を投じて欲しい。期待しています。

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