アジャイルSESというコンセプト

一説には東京都内に2万社のSES企業があるのだそうです。SESとはわかりやすく言えば、プログラマーの派遣ビジネスです。ご存じない方からすれば普通のビジネスだとお思いになるでしょう。ところが、ここに日本のIT業界の悪いところが集約されているのです。

“IT土方”という言葉があります。建設業界に見立てた多重下請構造を揶揄する表現なのですが、なかなかツライ現実を表しています。今でこそコンプライアンス遵守の世相で長時間労働はなくなりつつありますが、それでも発注元の圧力で不当・不条理な環境に甘んじているエンジニアは沢山います。ソフトウェアの開発というのは聞こえの良さとは裏原に、とてつもない労働集約型の仕事なんですよね。多分、プレファブ工法が普及した建設業界の方がよほど合理化・効率化されていると思います。大手銀行の勘定系システムのリプレースなんかが典型例なのですが、大人数のチームを編成してウォーターフォール式の大規模開発を行う現場はエンジニアが駒扱いされて納期と品質のプレッシャーに喘いで疲弊しています。そりゃ精神病むよな、と同情したくなります。

ソフトウェア開発のスタイルは、大きく二つの流儀に分かれます。一つは上記のウォーターフォール式、もう一つが比較的新しいアジャイル式です。これらはどちらが優っているというものでもなく、目的に応じて使い分けるべきなのですね。ざっくり言うと、ウォーターフォール型は、開発する仕様が決まっていて比較的大規模な案件向き。アジャイル型は、コンシューマー向けのプロダクトなど仕様が固まっていなくて柔軟な対応が求められる案件に向いています。ウチのおちゃのこネットとCARZYはこのアジャイルスタイルで開発をしています。乱暴な言い方ですが、ウォーターフォール型の開発案件は古い大企業の現場に多く見受けられ、アジャイル型はベンチャーや新しめの企業で採用されることが多いのです。仕様と予算と納期を予め決めてヨーイドンで開発するプロジェクトの方が予算を組んで管理する大企業には採用しやすいんですよね。アジャイル式は柔軟なスタイルな分、いつどんな成果物が上がってくるのか予測がつかず、管理がしづらいデメリットがあります。特に新規性を要求されない業務システムの開発ならウォーターフォールで構わないんですが、出してみないと顧客の反応が見えないWebサービスやアプリなんかは短いスパンで開発を回していくアジャイル式の方が無駄がなく効率的な開発が期待できます。ただ比較的新しい手法だけに、クライアントも見通しが立たない怖さがある。比較的小さくて新しい企業が採用することが多いのは、リスクを取ってでも良いものを作ろうという若さがあるからですね。

楽らクラウドは、従来はどこにでもある平凡なSES会社でした。しかしいま、このアジャイル型の開発手法にフォーカスした新しいやり方にシフトチェンジしようと考えています。顧客の現場になるべく近いポジションで、柔軟なアジャイル手法で合理的なソフトウェア開発にチャレンジする会社。顧客の目線に近い立ち位置でサービス設計レベルの提案ができる開発会社であることで、リモートワークに象徴されるような自由度の高い開発スタイルを実現する。これができれば、エンジニアにとっての幸せな仕事環境が手に入るはず。クライアントもエンジニアも双方がハッピーな理想形ですよね。

レベルの高い人材によるレベルの高い仕事をする魅力的な開発会社を目指します。目標は、それが達成できた時に心から満足感が得られる高いものでなければ意味がありませんから。