上場企業の純利益36%減、減収減益6割 21年3月期予想
新型コロナウイルスの影響で遅れていた上場企業の2021年3月期の業績予想の開示が広がってきた。7日までの開示を集計すると、純利益は前期比36%減となり3期連続の減益となる見通しだ。上場企業全体で赤字となったリーマン・ショック時の09年3月期以来の落ち込みとなる。秋以降の回復力を高めるため、踏み込んだコスト構造の見直しや事業改革が欠かせない。
7日時点で今期予想を開示した企業は全体の66%になった。利益の合計額は業績がピークだった18年3月期比で半減し、1ドル=80円前後の円高に苦しんだ13年3月期と同水準となる。売上高も前期比1割減の見込み。減収幅は上場企業全体が11%減だった10年3月期以来となり、企業は多くの製品やサービスの需要低迷に直面している。
需要減少などで最終赤字となる企業もある。三越伊勢丹ホールディングスは店舗休業などで600億円の最終赤字(前期は111億円の赤字)を見込む。事業環境が厳しい百貨店や航空など業績予想を出していない企業の開示が増えれば、全体の集計値が悪化する可能性もある。
今期の業績予想で、もっとも多いのが「減収減益型」で6割を占める。トヨタ自動車は20%の減収、64%の減益となる見通し。世界販売台数が13%減るのが響く。ホンダも14%の減収、64%の減益の予想。新興国などで二輪車販売が落ち込む。
企業が投資を手控え、設備投資関連の企業の業績も悪化する。建機大手コマツは15%の減収、56%の減益を見込む。小川啓之社長は「業績回復はV字型ではなくL字型に近い」とみる。
環境が悪いなかでも「増収増益型」の企業は全体の約2割ある。電子部品のイビデンは次世代通信規格「5G」向け基板が伸び、32%の増益を見込む。日清食品ホールディングスは「巣ごもり消費」により即席麺が好調で最高益を計画する。
コロナ影響が今後徐々に収まり、業績も持ち直すと期待する企業も多い。各国で都市封鎖が広がった「4~6月が業績のボトム」(三菱重工業の小沢寿人最高財務責任者)との声が増えてきた。
上期と通期の両方の業績予想を開示した585社で集計するとその傾向が鮮明だ。純利益は上期に前年同期比54%減となるのに対し、下期は19%増える見込み。例年の利益の内訳は下期が55%の割合だが、今期は下期が65%だ。もっとも全体の売り上げ計画では、上期(24%減)に続き下期も2%減る見通し。下期の増益はコスト削減によるところも大きそうだ。
コスト削減で利益を上積みし、日本電産は通期で「減収増益」を計画する。永守重信会長兼最高経営責任者は「社員からも何万という改善提案が出た」とし、70%増益を見込む。
コロナ以外でも米中対立など逆風は多く、収益強化が欠かせない。半導体製造装置のアドバンテストは、中国の華為技術(ファーウェイ)のスマホ出荷が減るとの懸念から製造装置の引き合いが減少。今期は33%の減益を見込む。セブン&アイ・ホールディングスが大型買収に乗り出すなどコロナ後を見据えた投資も増えてきた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の斎藤勉氏は「今後は不採算事業の撤退や設備縮小といった構造改革が必要だ」と指摘する。
(南畑竜太、村上徒紀郎)
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