「いい国に生まれたのだ」ということ

2010年6月20日(日) 9:06:04

ちょっと前の話になるが、今月8日、世界平和度指数ランキングが発表された。

いわゆる「世界で最も平和な国はどーこ?」ってヤツですね。
イギリスのエコノミスト誌の調査部門が23項目にわたって149カ国を対象に分析し、各国や地域がどれくらい平和かを相対的に数値化したものだ。数値化しているのは、外国との紛争や国内の殺人事件数、テロの危険性、人権保護の水準、軍事費など。

そこで日本は149カ国中第3位であった。素晴らしいことだと思う。
1位はニュージーランド。2位はアイスランド。ニュージーもアイスランドも素晴らしい国だとは思うが、日本に比べると先進具合が違いすぎる。そういう意味において、これだけ経済が発達していて、過酷な生存競争が行われていて、人口一億越えていて、しかも国際的にも(一応)重要な位置にいながらにして「世界で3番目に平和な国」って、実質的に「世界でもっとも進んでいて、かつ、もっとも平和で安全な国である」と言い切ってもいいのではないか。

世界でトップに平和な国。そして世界でトップに長寿な国。そんな国に我々日本人は生きている。
平和と健康。人類が有史以来必死に手に入れようとしてきたものである。これを両方とも持っている国民。この観点から行くと、日本は「パラダイス」そのものである。

もちろん反証データはいろいろあるだろうし、視点によっては全く違って見えてくることも確かだ。
たとえば自殺率の高さだけ取っても一概にシアワセな国とは言い難い。外国との紛争が少ないのは地域性もあるし海の存在も大きいだろう。軍事費だってアメリカの軍事的庇護を受けてのうのうとしているし、沖縄の犠牲の下に平和が成立しているという事実もあると思う。これを理想郷と考えるのはおめでたい。

でも。それでも。149カ国の下位の国民から見たら「いったい何が不満なんだろう」と思われること必定だ。「理想的な国家ではないか」と。
経済的にも世界トップクラス。教育水準も高い(文盲率が圧倒的に低い)。娯楽に溢れ、清潔で、公共交通機関は(他国に比べると)圧倒的に正確に走り、下水も上水も完備。気候も温暖、水や農産物にも恵まれ、世界トップクラスに食事がおいしい。公共心が高く、女性は美しく、ウォシュレットも普及していてトイレが快適(笑)。こんな国、他にあるだろうか。

いやまぁ何が言いたいかというと、ラッキーだよなぁ、ということ。
生まれる国は選べない。149カ国中、日本に生まれ落ちる確率はとても低い。たまたま世界平和度指数が低い国に生まれたら、まず水と安全の確保から始めなければいけない。この圧倒的なラッキーさ。超イケメンに生まれついたようなものである。これを喜ばずして何を喜ぼう。

「いい国に生まれたのだ」ということをちゃんと認めて、誇りに思おう。このごろ日本人は自信を失いすぎ、文句を言いすぎである。世界中から羨ましがられているのだと妄想に耽ってもいいくらいシアワセなのだ。

…と、こんなことを書くと憂国の士から強烈なメールが来たりするのだけど、悪いとこ、足りてないとこがたくさんあるのはボクも知ってる。日々悪化している部分もあるだろう。でも、この国に生まれてラッキーだよなぁとニッコリ笑うのは、今の日本人には必要なことだと思う。そこから一歩目を始めて、悪いところは改め、もっと良くするところは良くし、そのうえで他国に大きく貢献していければいいと思う。

ちなみに、主要国の順位を下に載せておく(全順位はこちらを参照)。
アジアにおいてはもうダントツのトップ。極東においてこれもなかなか奇跡的なことだと思う。

1. ニュージーランド
2. アイスランド
3. 日本
4. オーストリア
5. ノルウェー
6. アイルランド
7. デンマーク
8. ルクセンブルク
9. フィンランド
10. スウェーデン

14. カナダ
16. ドイツ
18. スイス
25. スペイン
31. イギリス
32. フランス
38. ベトナム
40. イタリア
43. 韓国
80. 中国
83. ブラジル
85. アメリカ
121. 南アフリカ
124. タイ
128. インド
139. 北朝鮮
143. ロシア
144. イスラエル
147. アフガニスタン
148. ソマリア
149. イラク

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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