Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

ルポ@事業仕分け

2009-11-17 16:19:10 | その他
複数の人から「アレは見ておいた方がいい」とアドバイスされたので
例の事業仕分けを見学してきた(16日午前)。
というわけで、以下簡単にルポ。

場所は市ヶ谷にある財務省の研修センターだ。
なるほど、こんなところにも財務の仕切りを感じてしまう。
「全然普段着でいいですよ」と言われたのでジーンズにミリタリーパーカーで
行ったら過激派かなにかだと思われたのか、厳重にセキュリティ検査をされる。

会場(というか体育館)は3会場に別れ、それぞれ同時並行で進められる。
僕が見学したのは午前の三つだ。
(1)高年齢者職業相談室運営費
(2)関空補給金
(3)キャリア教育※
入り口で渡されるイヤホン無しでもいいが、中には小声の人もいるので、付けた方
がいい。

最初の仕分けでは、厚労省が矢面に立たされる。財務省スタッフの論点説明の後、
委員がてきぱきと質問をぶつけていく。
「ハローワークとの違いは?」という質問に対して、いまひとつ要領を得ない
厚労省の回答。当たり前の話で、「ハロワだけでは実力不足だから」なんてこたえ
ようものなら、職業紹介自体を自治体へ移管してしまえと言われるので、モゴモゴ
と誤魔化すしかないのだ。

といって、昭和40年代に設置され、オンライン化もされず、紙中心の相談室への
ニーズなど多いわけがなく、結局、最後は「利用者数も減っていく中、独自性など
の検討をしているのか」という問いに対して「…していません」という回答を
引き出されてジ・エンド。実に手際の良い流れだ。

続いて、隣の国交省の仕分け会議へ移動。ガラガラだった厚労省と違い、立ち見が
列をなしている。そして会場でのやり取りもピリピリしたものを感じる。
それもそのはず、空港整備事業、関空補給金など、まさに旬なテーマがずらりと並び、
かつ金額も他とは桁違いだ。主な流れとしては。
「国交省側の予測の甘さのツケを、税金で補填するのはおかしいのではないか」
「昭和50年代の経済成長率などで予測した結果です」
「既に90億払い続けている補給金を160億にして、それで黒字化する見込みは?」
「空港利用料の値下げによって、発着回数を増やすことで対応したい」
ここで、財務省主計局の参加者がすかさず突っ込む。
「我々の試算では、値下げで発着回数は増えませんが」

仕分け委員や橋下知事が言うように、これは関空だけの問題ではない。伊丹、神戸
の両空港との関係を含めて抜本的な見直しをしない限り、赤字は増えることはあっても
減ることはないはずだ。ということで、予算が凍結されたのは報道の通りである。

さて、以下は気づいた点。

初日の報道を見ていると、仕分け委員の質問がなんだかずれているような印象が
あったが、僕が見た限りではそういったズレはほとんど感じられなかった。
むしろ、的確に質問を繰り出していたように見える。
恐らく、初日については絵的に面白そうなものが選ばれたのではないか。
(ただし、学術系のものならトンチンカンな質問が出そうではある)

財務省は資料を作るだけかと思っていたが、要所要所で適時援護射撃を撃っていた。
要するに、官僚側が“官僚用語”で煙に巻こうとすると、「ちょっと待った」と
議論の軸を戻してくれるわけだ。特に、国交省側が困惑している様子が遠目からでも
よくわかった。

仕分け対象には、とりあえず点数稼ぎで出してきた数合わせ用の事業と、以前から
削りたくて仕方のなかった本命事業が、明らかに混在している。
これは単純に、予算額と会場の空気を見ればすぐわかる。
たとえば、「高校でのキャリア教育推進プラン」なんて予算3億。会場も関空事業
とは違って空席も目立つし淡々と進む。
要するに本丸以外はどうでも良いのだけど、全省公平に見直すよというパフォーマンス
なのだろう。

総括として、良かった点。

典型的な年功序列型組織である官僚機構には、軌道修正という機能が完全に欠落し
ているということがよく分かった。
昭和40年代に作った事業を「理由は自分達でも分からないけど辞められない」と
いうのはもはや末期症状だ。
今回の基準を類似事業にも適用し、来年度以降もびしびし絞っていくと言っている
わけだから、(財務省的な基準であるにせよ)とりあえず一定の歯止めをかけられた
のは評価すべきだと思う。
ちなみに、財務省が分かっていながら予算を削れなかった理由は、自民党の族議員
の存在だ。小泉さんですら手を焼いた族議員を、霞が関から一掃したわけだから、
やはり政権交代は必要なのだ。

一方で、既に穴も見えていた。
「たった3億円の見直しを議論しても意味が無い」という声はその通りだと思う。
今年は潰せても、来年以降はどうか。鳩山さんのいうように、民主党(+財務省)が
がっちり手綱を握って、すべての無駄を潰せるだろうか。
僕はそうは思わない。必ず、何らかの形で無駄は残されるはずだ。
結局のところ、官僚自身に「組織肥大以外のインセンティブ」
を与える公務員制度改革が必須なのだ。

そして、そういう方向性は残念ながら民主党からは見えてこない。

自民党が更正してくれればいいのに、総裁が自転車でこけたことくらいしか
ニュースにならないのでもうダメだろう。
わけのわからない新党も出来るそうだし、二大政党制の実現までは、
もうしばらく時間がかかりそうだ。


※三つ目は時間的に全部はヒアリングできなかったので詳細はパス


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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
国家自体を民営化 (yasu)
2009-11-17 16:50:34
>結局のところ、官僚自身に「組織肥大以外のインセンティブ」
を与える公務員制度改革が必須なのだ。

無駄を削れば自分たちの得になる。
民間企業では当たり前の論理です。
もはや持続可能な社会のためには、国家自体を民営化するしかないんじゃないですかね。

ホリエモンもそう思ってるみたいだし。
http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10388307626.html
Unknown (かくせいⅢ)
2009-11-17 19:09:51
民主党の「霞ヶ関に100人の政治家を送り込むので完全に管理できます」と言う選挙前の口上を聞けば分かるように、彼らのマネジメントモデルは「獄吏と囚人モデル」。

こんなもので真のコストダウンなんて出来るはずが無い。やる気にならない官吏に、削る動機など無いのだ。そして言われたことだけをやる、受身役人が輩出するだろう。

加えて、新たな族議員が出る。教員免許更新制度の予算を削ったそうだが、支援団体である日教組との癒着だろう。教員が質向上に資する金を惜しんで、高校無料化をやるのは馬鹿のすることだろう。

結局、給料泥棒の役人ばかりになる環境を作っているのが民主党だ。こう言う茶番を評価する程度の低い国民にふさわしいのは、国家財政破綻だろう。

ハイパーインフレになって、皆で苦しもう。その日は近い。
事業仕分けを見て (tksuzuka)
2009-11-17 19:19:35
とりあえずプレゼンの勉強をしようと思いました。

しかしプレゼンの上手い人は、どうやって学習しているのだろうかとも思いました。
Unknown (KKK)
2009-11-17 19:43:01
【偽装がばれたでござるの巻き】
やっぱりボロが出ましたね。ハイお芝居で御苦労さまでございました~w
ハイ御苦労さんw御苦労さんw仕分け人さん帰っていいよ~~
つーか怒ってんだぞ!!!
マニュアルに問題指摘の手引きまで全部書いてあったらその辺の時給1000円の学生でもできるだろっ!!!
ってそう思いませんか?皆さま方

事業仕分けで極秘マニュアル=財務省の視点を指南-政治主導に逆行・行政刷新会議

― 査定マニュアルは、事業仕分け前に「参考メモ」として仕分け人に配布され、事業ごとに「論点」を提示し、問題点などが個条書きされている。マニュアルに従えば、対象事業に詳しくない仕分け人でも、厳しく問題点を指摘できる仕組みだ。
 ―
(詳しくない素人でもできるんだったらバイトでええやん?
ちゅうか国民舐めとるやろ~!!)
http://news.livedoor.com/article/detail/4455336/
空気のちから。 (山田祐太)
2009-11-17 22:47:43
批判も賛成も多々ありますけど、財務省と組む戦術は上手くいったようですね。不要な事業のバルクセールを見ている気分です。

公にすることで、「さすがにこれはマズイだろ」という空気が出来ますからね。恥を感じてもらうしか、内側から軌道修正できない気がします。

それにしても族議員の持つ既得権温存の役割がこれほど大きいとは思いませんでした。今じゃ空気のような存在でしょうか(笑)
財務省 (ぽょぽょ)
2009-11-18 00:52:30
財務省が首を縦に振るものについては、いいんでしょうけど、そうじゃないもの、特に一番重い人件費をどうするかですよね。国公労との関係もあるし。政権のひとつやふたつ吹っ飛ぶ覚悟でやらないとどうにもならないんでしょうね。

しかし、俺様が払っている重税が、40年代に作られてその後見直されてなかったものに回っていたなんて、これを見せただけでも今回はまさに「漸進」ではないかな。納税者が自分が払ったお金がなんに使われているのかまるっきり知らないまま税金を払わされていたなんてばかげてます。
特別会計も一般会計化してきちんと問い詰めてほしいです。そっちのほうがよほど無駄多そうですよ。
質問 (masa)
2009-11-18 09:33:50
世の中では「茶番劇」、「パフォーマンス」などと揶揄されていますがそのような空気はお感じになりましたでしょうか?
これも (yasu)
2009-11-18 11:24:04
ホリエモンのブログだとこのエントリーも参考になるかと
http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10347821273.html
茶番 (城)
2009-11-18 12:26:02
>世の中では「茶番劇」、「パフォーマンス」などと揶揄されていますがそのような空気はお感じになりましたでしょうか?

そうは思わなかった。
ただ、日本自体が茶番だったんだと気づいた。
Unknown (ZG)
2009-11-18 14:32:04
事業仕分けは、テレビで見ていて面白いとは思ってる、だけど、それにしては額が小さい。97兆円ですよ97兆円、87兆円から、最低でも89兆円の予算から事業仕分けなら、分からないでもないのだが、天下りを削り中間窃取を止めさせるのは理解出来る、何故なら役に立たない老人に行く金だからだ。しかし、予約して10年後に37年間新型が出ない車を買わされたり、お金が有っても買える物が無い社会は嫌だなぁ。