プロへの道

2009年10月26日(月) 7:05:27

娘の通っている中学高校の学祭があり、それを見学に行ってきた。
いわゆる文化祭的な学祭で、各教室でいろんな部が発表を行う形式。娘は写真部なので写真部の教室をいの一番に見に行き、その後だいたい全部の教室を見学した。こういう展示って作るのって楽しいよね。昔を思い出しながら。

娘が特に勧めてくれたので、講堂でのダンス部の公演「ヘラクレス」も観た。約1時間の大作。
整理券が出るくらいの人気で、30分以上並んでようやく入場。満席である。まぁ女子中高生がやることだからたいしたことはないと先入観をもって見始めた。しかしこれがなかなかスゴイ。「ヘラクレス」はディズニー映画で、それを舞台用に焼き直し(音楽は映画のまま使用)、いわゆるブロードウェイ・ミュージカルみたいに作り込んであるのだが、まずダンスが予想以上に素晴らしい(振付も)。ふーん、なんかもう「出来てるじゃん」と思った。一応「プロ」として観ての印象。

もちろん児戯に等しいダンスをする子もいる。部活だもん初心者だっているだろう。でも主役級の数人はこのまま有料の舞台でも行けるのではないかと思わせる奮闘ぶり。うまいなぁ。ダンスも演技も笑顔も素晴らしい。この分野、日本でも少しずつ層が厚くなって来始めたみたい。

とはいえ、いざ将来の進路として「ダンス」「ミュージカル」を考えたとき、日本では劇団四季くらいしかプロの道がない。宝塚はもっと早く入学しないとダメ。バレエやモダンダンスで食べていくのは小さいときからの積み重ねが必要(というか世界トップクラスでないと食べていけない)。あとはアーチストのバックダンサーか舞台俳優かな。まぁ世界的に競争率の高い分野ではあるのだけど、日本ではあまりにプロへの道が少ないよなぁ。

「夢はかなう」とか「やりたいことをしろ」って言われても、選択肢がない社会ではやりようがない。
だからみんな「つぶしがきく」という意味で普通に大学に入り、そのままなんとなく埋もれていってしまう。主役級のふたりなんか専門的に数年磨けばプロでやれそうだと思ったけどなぁ。でも受け皿がない。才能とやる気のある子にとっては可哀想な話だ。

幸いにもここ20年、国境の壁はどんどん薄くなり、先駆者もどんどん道を切り開いてくれ、海外に出て行くという選択肢が身近なものとなった。アメリカに行くのが一番かもね。日本で日本のお客さんを相手にするより楽しいかもしれない。スタイルも運動神経も外国人の方が優っている場合が多いから、その中で勝ち残っていくのは大変だけど、最初から世界が相手というシンプルさもある。

大拍手を受けてステージの快感に魅せられた風の、あの才能ある子たちは、どんな未来を選ぶのだろう。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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