二十世紀的やり方がようやく終わり始めている

2009年9月27日(日) 19:21:39

鳩山首相って、あの張り付いたような目と表情がずっと苦手だったのだけど、今回の一連の外交デビューでの核廃絶スピーチとか温暖化防止策「25%減」表明スピーチとか大リーグ始球式のマウンドを見ていて、逆にあの張り付いたような表情が「なにごとにも動じない肝の太さの表れ」と見えてきて、なんだか不思議に頼もしかった。
というか、この人、急激に成長していない? あんなに頼りなかったのに…。まさに地位が人を作っている過程をボクらは目撃しているのかもしれない。

そりゃ人間だから緊張もしただろう。政権交代したニューリーダーを世界中が「どんなもんだ?」と注目している現場である。そこで、あの張り付いたような目と表情を変えず、手も震えず声も震えず、自分の言葉でしっかりスピーチや対談をこなした「太さ」は、人間としてきちんと評価したいと思う。すばらしい。

政権発足してたった5日目から始まった鳩山外交(国連総会・金融サミットG20)。大向こう受けする表明が多すぎた気もするが、後手後手の「対応」に回りがちだった今までの外交に対して、先手の「ビジョン」を示せたことは大きいと思うな。国際舞台において、日本が「どう対応するか」ではなく「どこに進むか」を示せたのは初めてなのではなかろうか。「どこに進むか」が決まると日本人って超優秀だからね。もちろんその進路が間違っていたら大変なので議論はいるが、「どこに進むか」を表明するクセがつけば、今後は大きく変わってくると思う。内容もなかなか良かったと思うけど、今度の鳩山外交の意義はそこなのではないかとボクは思う。

まったく注目してなかったけど、いつの間にか優勝していたジャイアンツも原監督の采配が絶賛されている。お金にものを言わせた経営も変化し、古くからの根性論も一掃されてきたようである。いろんなところで少しずつ「二十世紀的やり方」が終わり始めているのを感じる。個人的には「ようやく」という言葉がしっくりくるのだけど、「もしかしたらもうこの国は変わらないのではないか」と思った時期もあったから、「ようやく」でも「やっと」でも「いまさら」でもいいから、そのことを喜びたい。そして自分の領域内でしっかりその流れに参加したい。なんとかいい方に変えて、次の世代に手渡したい。そんなことを思った週末だった。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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