半年ほど前に出た「シリコンバレーベンチャー本」。副題はThe Rebirth of Silicon Valley and the Rise of Web2.0。SEO対策は万全ですな。マスコミ嫌いで知られるFacebookのCEO、Mark Zuckerbergに気に入られて長時間インタビューをものにした筆者が、さらにさまざまなweb2.0系ベンチャー関係者にインタビューした内容を元に書かれている。弁護士事務所Wilson SonsiniのYokum Takuさんよりの頂き物なり。「是非読んでみて」と。
内容は、タイトルにあるとおり「一回ベンチャーを成功させるのは運だが、二回成功できるのは本人の能力」ということで、特にweb2.0関連で次々と新しいベンチャーにトライし続けるシリアルアントレプレナーにフォーカスして書かれている。
16ページには「web2.0ベンチャー相関図」もある。web1.0会社からどんなweb2.0会社が生まれたか、と。web2.0企業として登場しているのがdeli.cio.us、Twitter, Ning、Digg、Slide、YouTube、Yelp、Facebook、LinkedIn、Blogger、Six Apart、Odeo、Pownce、Revision3、Friendster。
いずれも知る人ぞ知るweb2.0企業だが、こうしたベンチャーを生み出したweb1.0企業として図内に登場するのがNetscape、Opsware、Equinix、Excuite@Home、PayPal。
この中で「単体として存続している企業」はEquinixのみ。あとは買収されたり、もうなかったり。
Equinixというあまりメジャーでない(でも今でも企業価値1500億円の)会社が登場するのは、ひとえにこのファウンダーだったJay Adelsonを図内に登場させるため。現DiggのCEOです。しかし、EquinixはIPOはしたものの、ファウンダーのJay Adelsonはマネジメントの座を追われ、お飾りのCTOとなり、しかも株価が下落する中、自分の株は一株も売らずに持ち続け、いったんは$55 million(約55億円)となった持分のトータル価値はゼロに。結局会社も辞めてSan Franciscoの家も売りNew Yorkに移る。身も心もぼろぼろ、という描写であります。
して、その後若きKevin Roseと出会ってDiggを起業するわけだが、本には「Jayは、ハンサムで機知に富むKevin Roseがうらやましい」というような表現が何度か出てくる。しかしだな、私、この二人もいるミーティングに出たことがあるのだが、私的にはJay Adelsonの方がハンサムだと思う。うーん、白人の美的感覚はよくわからない。
さて、話を戻してあまたのweb2.0企業を生み出したweb1.0企業には独立して残っているところは(ほとんど)ないという点。
これ大事。Googleみたいにいまだに成功裏に存続している企業だと、そこからたくさんの人が飛び出して新たに起業する、という感じにならないんですよね。ここ1-2年Googleも大企業化して、「飛び出し組」がちらほら出始めてはいるが、やはり、あるところで盛大に買収されてしまったベンチャーのほうが一気に人材が流出する。
本の中では、元Paypalのアントレプレナーが山のようにいることを指し、「Paypal Maffia」と呼んでいる。確かに多い。
そのうちの一人がPeter Thiel。Paypalは、ドットコムバブル崩壊直前に増資をしたことでバブル崩壊後の低迷を乗り切って成功したわけだが、この「直前の増資」の際に、「もっといい条件で増資できるんじゃ・・・」などと社内が割れたところを「バブルは終わり冬の時代が来る。今のうちにさっさと増資すべし」と。彼の読みがあたったわけです。ちなみに、このひとUS Chess Masterということで、チェスの名手。恐ろしく頭脳明晰なんですな。
ちょうど先週とある人と話をしていて
「ドットコムバブル期に上り調子のベンチャーを経営。で、$100 millionの企業価値で$30 million増資しようとしていて、『投資したい』というところがたくさんありすぎて、よりよい条件で投資させようとあちこちを天秤にかけていたらバブル崩壊。会社は倒産」
と。いや、こういうベンチャー山のようにあるんですよね。
だからこそPeter Thielの判断が引き立つと。
とはいえ、これは「たまたまラッキー」だったのかもしれず。「いやそうじゃない、本当に自分の能力だ」と証明するためには、二つ目のビリオンダラーカンパニーを作らないとならないわけです。ちなみにPeter Thiel、YouTube上の「バブル風刺パロディソングビデオ」の一番最初にも「There’s absolutely no bubble in technology」というコメントの語り手として登場。
なおPaypal、あまり日本ではなじみがないようなので簡単に説明しておきますと、2006年の取り扱い高$38 billion、3兆8千億円、利益$1.4 billion、1400億円という大オンライン決済サービス。現eBayの一部でございます。
あと、この本には「シリコンバレー小話」が満載。PaypalのファウンダーMax Levchinが買った婚約指輪が3.14カラットだったとか(もちろん円周率にちなんで)、Marc Andreessenはコンファレンスなど業界人が多い場所で立ち止まると周りに彼と話したい人の輪または列ができてしまうので、誰とも目をあわさないよう宙を見据えてガシガシ歩いていくとか。(超背が高い)。
では本より引用しておしまい。
(Silicon Valley) might be the only place on earth where just creating a single $1 billion company wasn’t enough. An entrepreneur had to do it twice to know he was actually good. And three? Well, that was Jim Clark
Perhaps you’d also like to read “Founders at Work: Stories of Startups’ Early Days” by Jessica Livingston, one of the Y Combinator founders.
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Once You’re Lucky, Twice You’re Goodの本人からのサイン本持っています。:)
あと、”Founders at Work: Stories of Startups’ Early Days”読むのより通に慣れた感じがします。
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