ハードウェア

映画に出てきそうなフロントガラス前方にナビ情報を表示する世界初のカーナビをパイオニアが7月下旬から発売へ


カーナビゲーションシステム「カロッツェリア(carrozzeria) サイバーナビ」を出しているパイオニアが、世界で初めてAR(拡張現実)情報をフロントガラス前方へ映し出すモデルを発表しました。発売時期は7月下旬となっています。

carrozzeria | カーナビ/カーオーディオ | pioneer
http://pioneer.jp/carrozzeria/

5月8日に都内で「2012夏カロッツェリア新商品発表会」が行われ、世界初のAR HUD(ヘッドアップディスプレイ)ユニット搭載カーナビが発表されました。パイオニアは昨年、フロントガラス越しの映像に情報を重ねて表示できる「ARスカウターモード」搭載のカロッツェリアを発売しましたが、今年はそこに新たにヘッドアップディスプレイを使用したモデルが加わり、ダッシュボードではなく前方を見たままナビゲーション情報を把握することができるようになります。


こちらが商品紹介ムービー。

Pioneer サイバーナビ AVIC-VH99HUD 商品紹介 - YouTube


HUDは背景に情報を重ねて表示できることから視点移動の時間や焦点を合わせる時間が少ないという特徴があり、一部の航空機や自動車で使用されています。しかし、一部高級車のオプションであったりして市場としてあまり大きくなく、また、フロントウインドウ下部にあって画面自体が小さく、簡単な文字や図形しか表示できませんでした。


今回のサイバーナビ AR HUDの特徴として、まずはレーザーを使用していることがあります。液晶だとバックライトのせいで白く浮き上がってしまうことがありますが、レーザーによって高輝度・高コントラストを実現、くっきりと映像を映し出すことができます。


AR HUDユニットの仕組み。ブラウン管テレビの走査と同じ原理です。


なぜ映像が浮かび上がるのか、というと、夜に電車の窓を見ていると自分が向こう側に浮かんでいるように見える現象と同じことなのだそうです。


AR情報を映し出すためには高精度な位置認識技術が必要ですが、サイバーナビではすでにそれを実現しているため、今回のHUDが可能になっています。また、サンバイザー部へ取り付けられることで、AR表示に必要な広い視野への表示を実現しています。設置時はサンバイザーを外すことになるため、代わりになる簡易的な遮光板も搭載。現行車の7割に取り付けが可能となる見込みで、適合車種リストは5月下旬にサイトにて公開されます。


なお、表示内容は必要最小限に絞られていて、注視しなくても情報が分かるよう配慮されています。これはHUDドライバーモード。


HUDマップモード


HUDハイウェイモード


HUD交差点リスト表示


研究によって、1時間の運転中に58回もナビ画面を見ているということが明らかになっており、このHUDタイプの登場によって、より安心快適な運転に繋がることが期待されます。


2011年にパイオニアは「ARスカウターモード」を実現。これは、車載カメラで撮影した前方映像にナビ情報を重ねるもの。


2012年版では、速度標識検知が追加されました。


走行中に標識を検知して、一定時間描画してくれます。


これをナビが地図上に登録、次回以降の走行では事前に標識の内容を把握することができます。


また、誘導性も向上。


適性車間距離の表現も向上しています。


レーン移動検知もよりわかりやすくなりました。


駐車場の満車・空車情報をチェックする機能もついていましたが、「走行中に満車になっていた」ということが起こらないように、刻々と状況をチェックするパーキングウォッチャーが搭載されました。


常時パーキング情報を確認可能になりました。


また、パフォーマンス自体も強化、起動時間もルート探索時間も短縮されています。


こちらが実物のセット。


本体部分は従来モデルと比べて大きな変化はありません。


頭上のコレがHUDユニット。


実際に運転席からのぞき込むとこんな感じに見えます。


2012/05/08 13:45追記
質疑応答の様子です。

Impress CarWatch:
視距離は3mとありますが、3mに設定した理由は何ですか?また、走査は1秒間に何Hz走査ですか?

A:
視界距離を3mとした理由は、だいたい2mを越えると焦点移動時間が短くなることが実験で分かっており、社内でテストして2mよりも3mが見やすいということが分かったためです。走査の描画更新回数は20Hzから24Hzで更新しています。

テレビ東京:
価格帯はどれぐらいを想定していますか?

A:
サイバーナビの場合ですね?これは、HUDが組まれたモデルからボリュームゾーンまで全7モデルあって、HUDはオプションとしては10万5000円です。HUDがセットになっているのは最上位モデルで、実売32万円前後をイメージしています。また、ボリュームゾーンでは15万円前後を予定しています。1D+1Dタイプと2Dの価格差は2万円です。

テレビ東京:
これは一般的なカーナビよりも何割ぐらい高いんですか?

A:
HUDについては初めて世の中に出るものなので……昨年のサイバーナビと同ランクで比べると2万円ほど値下げしています。市場の平均ナビ価格は安いですが、高付加価値な8インチのAVNだとかの中では、ARスカウターやHUDを抜けば市場価格並かなと想定しています。それらを抜いて30万円を切るのは、この価値の製品であれば、すごくお安いと自負しております。

日経新聞:
HUDはどういった顧客層がターゲットですか?

A:
ターゲットはサイバーナビの根強いユーザーということで先進層、新しいモノに興味を持たれている人です。

日経新聞:
他社もHUDの開発を進めていると思うが、優位な点は何ですか?

A:
現在HUDで市場に出ているものは単色であったり簡単な図形や文字を表示するものしかなく、このようなモデルは世界初です。現在、他社さんもHUDを開発しているかもしれませんが、市場に出る時期は未定になっていると思います。AR情報を実際の風景に重ねられるところも世界初なので、これが特徴になっているのではないかと思います。

フジテレビ:
年間売上目標台数や金額があれば教えて下さい

A:
台数予定は現状未定となっています。

NHK:
HUDは無線で情報を飛ばすと聞いているが、自社製のカーナビとリンクしているのでしょうか。例えば、他社製のナビもこの装置にリンクすれば見られたり、今後なったりしますか?

A:
他社と繋ぐ予定はありません。無線を飛ばしているというのは、サイバーナビからルート情報をBluetoothで飛ばしているということで、サイバーナビがなければ動かないユニットとなっています。

テレビ朝日:
HUDは実際に風景を重ねることが特徴ですが、安全面が不安なのかなと思います。そのあたりの配慮はいかがですか?

A:
表示内容について、なるべくシンプルな情報にしています。実際、風景に重ねるので透過する光をなるべく多く取れるような形にしています。注視しない形というのも気をつけていて、コントラストも調整したり、フォントサイズを大きくすることで文字数を制限したりしています。

テレビ朝日:
道路交通法的には問題ないわけですね?

A:
道交法上は「画面を注視しないこと」というのがあるので、それに気をつけたものとなっています。

2012/05/08 17:08写真追加
実車内で画面を確認するとこんな感じ、コレはHUDハイウェイモード。


明るいところよりは暗いところにいたほうが見やすいものの、日中だからといってナビが見えないということはありません。赤い「S」の印は赤信号を検知しているということ。


最初は目線より上にルート案内が出ているのがちょっと不思議な感覚ですが、慣れるとダッシュボードへ顔を向けることなく、微妙な視線移動だけで済むようになるので、安全度合いは高いかも。


もちろん、夜に乗れば雰囲気はより高まること間違いなし。人によって機動警察パトレイバーやM:i:Ⅲなど、いろんな映画の近未来的ナビシステムが頭に浮かぶのではないでしょうか。

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in 取材,   ハードウェア,   動画, Posted by logc_nt

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