バブル期の投資で抱えた約1000億円の損失を「飛ばし」という手法で10年以上隠し続け、不正な会計操作の末に処理したオリンパス事件。2011年12月に公開された第三者委員会の報告書でその概要が明らかになったが、東証は2012年1月、組織的な犯行ではなく、利益水準や業績トレンドを継続的に大きく見誤らせるものであったとまではいえないとして上場維持を決定した。
次の焦点は第三者委員会の報告書で求められた、新経営陣への移行。4月20日に開催される臨時株主総会では新経営陣の選任が議案となるが、総会に出席するために来日したマイケル・ウッドフォード元社長に今後の方針などについて尋ねた。
――日本に来るのはいつ以来ですか。
(10月14日に)解職されてから4回目の来日になるのですが、1月以来になります。
――日本に来て、どのようなことを感じましたか
状況が悪化していますね。まず、4月16日付の時事通信の報道(「取締役2人が残留へ=『必要な人材』と判断−オリンパス」)によると、役員を辞任する予定だった西垣晋一取締役と渡辺和弘常務が執行役員として残るということです。甲斐中辰夫委員長のもとでの第三者委員会の報告書では「総退陣すべき」と結論付けていたに関わらずです。企業統治に問題があるとしか言えません。
もう1つ、(過大なコンサル報酬が支払われた)ジャイラスの買収に深くかかわり、買収当時、ロンドンに6週間も滞在していた経営企画本部長兼広報・IR室長の南部昭浩氏が、4月1日付で財務本部長に起用されたことです。私は驚いています。
――こうしたことはなぜ起こったとお考えですか。
オリンパスにとどまらず、社会全般が変革の必然性を感じていないからのように感じます。
――友人の宮田耕治氏が立ち上げたWebサイト「Olympus Grassroots」などを通じて現役社員の声を聞くこともあると思うのですが、どのような反応がありますか。
支持者には一部、気の強い方もいらっしゃるのですが、ちょっとウツ気味のあきらめが伝わってきますね。
その失望の背景には、国内の大株主の対応があります。20億ドルの不正を告発した私に対して、「支持する」という声を国内の大株主はあげていません。旧経営陣への批判の声も一度もあげていません。経営改革委員会は、(次期経営陣を指名する)指名委員会の委員として林田康男氏と来間紘氏を選びました。その2人は重大な不正を指摘した手紙を私から6回も受けたにもかかわらず、一度もアクションを起こしませんでした。言い続けるとキリがないのですが、あきらめて憂鬱になっても無理はないですね。
2週間ほど前、ワシントンD.C.である米国の機関投資家の業界団体の総会に出席して講演しました。それはカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)のように数兆円も動かす機関投資家が集まる、非常に影響力のある業界団体なんですね。
その時、ある大きな機関投資家の代表者がやってきて、「やっぱり日本は三流の国ですよね」と言いました。私は「はい」とは言わなかったのですが、答えに非常に困りました。そう思われても無理はない面が多いからです。
オリンパスの経営陣自らが設定した第三者委員会では報告書で総退陣を求めており、かつオリンパスの(高山修一)社長がその報告書の提言を受け入れると言っていました。しかし、もし時事通信の報道が正しいとすれば、少なくとも(旧経営陣のうちの)2人が執行役員として残ることになりそうです。そして、疑惑のある南部昭浩氏が財務本部長に起用される、というちょっと不思議な国なのです。外から見て、「これは三流の国だな」と思っても無理はないですよね。
また、私は11月に自民党と民主党のワーキングチームの会合に出席して、コーポレート・ガバナンスについてお話ししました。その時、社外取締役の導入を義務付ける必要性について、私は力説しました。しかし、先週発表された草案の内容を聞くと、社外取締役導入の義務付けをあきらめたようです。それは経団連の猛烈な反対によることだと聞いています。
私は取締役会のメンバーの半分以上を社外取締役が占めるべきと思っています。1人の外部取締役を法的に義務付けることも反対する本当の理由は何なのでしょうか。
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