クレジットリスクはバーチャルの世界にもある。最近、ついにセカンドライフの銀行が一つ破綻した。その名も
Ginko Bank
名前からして怪しいのだが、年利40-100%という高利回りの預金を提供、という本当に怪しい銀行。しかし、というか、当然、というか、ついに取り付け騒ぎが起こり、セカンドライフ内のGinko銀行(あーややこし)のATMにアバターが列をなして、預金引き出しを始めた。(笑ってはいけません。アバターの中にいる人は真剣なのだ。冒頭のスクリーンショットは私が行ったときにATMの前で「お手上げ」していた引き出し希望者。)
・・・と、突然こんな話をしても、セカンドライフをしたことのない人にとってはなんのことやら、という感じかもしれないので、2ヶ月ほど前に日経産業に掲載いただいた、バーチャルワールドの貨幣経済に関する文章をまずは読んでください。
***以下、日経産業のコラム***
セカンドライフは利用者(ユニークユーザー)数が三百万人を超す3D(三次元)のバーチャルワールド。二〇〇三年にオープンし、昨年から人気が加速、日本人のユーザーも急速に増えつつある。ワールド内でのユーザー間商取引も活発だ。アクセサリー、髪型、洋服など「3Dオブジェクト」の販売や「バーチャル不動産」の分譲開発、アダルト系サービスと多様な取引がされている。
最近は、ワールド内の売り上げだけで現実の生計を立てる人たちも出てきた。こうしたユーザー間の取引額が一日に百五十万ドルを超えることもあるという活況ぶりだ。
一般的に、バーチャルワールドでは「ワールド内貨幣」が発行される。ユーザーはこの貨幣を買ってワールド内での取引をする。通常、ワールド運営会社は「ワールド内貨幣」を売ることはあっても、これを再度、リアルなお金に換えてくれることはない。
ゲームセンターで買ったプレー用のコインが余ってもセンター側が引き換えてくれないのと同じだ。ワールド内での商取引でもうけを出したユーザーは運営会社とは関係ない第三者による私設通貨取引所でリアルなお金に換金することが多い。
そんななか、セカンドライフを運営する米リンデンラボ社は自ら通貨交換所を設立。バーチャル貨幣のリンデンドルを買いたいユーザーと売りたいユーザーの間のオークションを可能にした。リンデンラボには取引手数料が入る仕組み。リンデンドルを買いたい人のほうが多ければ、リンデンラボ自身が発行して市場で売ることもあり、四月時点で月間七百万ドル(約八億五千二百万円)相当が取引されている。
リンデンラボは「セカンドライフ内経済」の詳細なデータを毎月公開している。そこから推定すると、「通貨オークション取引手数料」と「リンデンドル販売」だけで、月間百万ドル程度の収入が見込まれる。最大の収入源のバーチャル不動産のリース収入は同四百万ドル近い。それに比べれば小さいが、有料会員から集める会費総額の八十万ドルを超え、重要な収入源となっている。
リンデンドルと米ドル相場は変動性だ。リンデンラボはセカンドライフの人気が上昇を続ける間にリンデンドルを販売できる。一方、人気が下落してもリンデンドル相場を維持する義務はない。
もちろん、国家経済と本質的には同じシステムなわけで、様々な「経済問題」を生む可能性はある。ワールド内経済がうまくいっている間はバブルが心配だ。実際、セカンドライフ内ではすでにバーチャル不動産開発ミリオネアが複数誕生し、過熱ぶりが伺われる。
需給バランスが崩れればインフレもあり得る。さらに、セカンドライフ自体の人気が落ちてくると、一気にハイパーインフレーションが起き、ワールド内経済が破綻する可能性もある。
実際、競合他社がワールド内貨幣を乱発したためインフレとなり、コアユーザーの激しい不評を買った。急きょ、経済の専門家を雇い「ワールド内貨幣経済」の分析と修正を迫られたところもある。たかがゲーム、されどゲーム。真剣な「経済政策」が必要になってきているのである。
***以上***
さて、ということで、このコラムを書いてから2ヶ月たった今もセカンドライフのワールド内経済は特に破綻していないのだが、その中の一私営銀行であるところのGinkoが実質的に破綻したのであります。
Second Life Heraldには、列を成すアバターの姿が載っている記事が。内容は、自称ブラジル人のGinkoオーナーへのインタビュー。いわく
- Ginkoは、1万8000口座に2億リンデンドルの引き出し可能預金がある。(米ドルにして74万ドル、8000万円強)
- 取り付け騒ぎが起こってから、一日の引き出し総額を百万リンデンドルとした
- 引き出し希望者(アバター)には整理券を配っている
- 整理券は数千番までいった
- 新たな預金者も継続して募集中。年利60%超らしい
笑ってはいけません。重ねて言うが、アバターの中の人は真剣なのだ。
「なぜ運営元のLinden LabはGinkoオーナーの資産差し押さえ等の措置に出ないのか」
といったクレームがあちこちで語られている。(Ginkoオーナーは他のSecond Life内事業もあるらしい)。
が、しかし、多分Lindenは、コンピュータシステムとしてのSecond Life運営に必死で、それどころじゃないんじゃないでしょうか。(ここ数週間、毎日のようにダウンしている。時にはまとめて6時間も。開始画面の「About Second Life」というクレジットの一番下には「スティーブはまじで休みが必要だ」とひっそり書いてある。運営側の方はさぞやお辛いことでしょう。)
そもそも、リアルだろうがバーチャルだろうが、米ドルとの相場がある程度安定している通貨で年利40-100%の貯金があるわけないです。誰がどう考えてもねずみ講。
ちょっと面白いなぁと思ったのは、上記のリンク先の記事へのコメント。
現実世界でカジノと金貸しを行う会社の人が、Second Life内で銀行を開こうとしたが、どう計算してもリンデンドルベースで年利14%以上はペイしない、という結論になって、事業を断念した、という内容。「リンデンドルと米ドルの先物」などというシャレたものはさすがにないと思うが、まじめに考えた、という雰囲気がコメントから窺えて興味深い。
***
さて、こういうエントリーを書くと、多分どこかで
「セカンドライフがダメな理由」
として引用される気がする。そう読みたい人はそう読んでいただいて全く問題ないのだが、一方で、
「ほほー、そんな面白いことが起こっているのか。是非研究・実験してみよう!」
と思う人が出てくるといいんですが。別にセカンドライフが流行ろうが流行るまいが、どっちでもよいではないですか。それより、新しい場で新しいことをトライしてみようというのも建設的ではないかと。
実際、経済学、社会学、法学等々の実験場として、とても面白いと思います。
なんというか、人間が実世界の中で営々と築き上げた「社会のルール」「経済のルール」「法治国家のありかた」といったものを、試行錯誤しながらもう一度バーチャルワールド内で再構築しているような感じ。(結果的には、リアルの世界にどんどん近くなっていくのだが。)
現在あるリアル世界に対して作られた法律がグローバルなバーチャルワールドにどう働くかも興味深いかと。バーチャルワールド関連の法規に特化したブログもあり、もちろん、Ginko問題についても取り上げられています。
余談ながら、「ナンパの仕方」も試行錯誤、再構築されていておかしい。が、その話はまたいつか。
お久しぶりです。
私はソフトウェアのVerUPがメンドクなり、最近やっていません。音楽が好きなのでmyspaceの方が合うみたいです。じゃあ、セカンドライフは何が好きな人達が集まっているかというと「お金」じゃないかと僕は思うのですが、どうでしょう?
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>アダルト系サービス
これが激しく気になります!
呼び出す人のスタイル情報がアバターになっているとか・・・
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>新たな預金者も継続して募集中。年利60%超らしい
Ginkoは8月5日に預金金利を日利0.01%から0.1%まで引き上げました。これは年利に換算すると、3%から44%への引き上げです。
それ以前、7月31日に日利を0.13%→0.10%(年利換算60%→44%)、8月2日には0.10%→0.05%(年利換算44%→20%)、8月3日には、さらに0.01%(年利換算3%)まで引き下げています。
記事中の60%のくだりは、過去に高い金利を払ったので、銀行が危うくなったという意味なのかなと思いました。
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> それより、新しい場で新しいことをトライしてみようというのも建設的ではないかと。
いやだから新しくもないから駄目だって言われてる気がするんだけど。。
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chikaです。
>音楽が好きなのでmyspaceの方が合う
Second Life(SL)内ライブコンサート、なんてのもありますよ。先週末はSLユーザーコンベンションがシカゴで行われましたが、「ミュージシャンとしてSLで成功するための方法」なんていうディスカッションも行われてました。っていうか・・・・myspaceと比べるのはちょっと無理があるという気がしますが。
>アダルト系サービス
これが激しく気になります!
これはですね、SL内アダルトです。SL内だけで完結。ただし、サービス業に従事している人の中には、リアルは男、って言う人も結構いるんじゃないかと思います。w
最近SLでは、カジノが禁止になりましたが、「アダルトも禁止になるのでは!」というディスカッションが一部ありました。しかしこちらについては、「でもよく考えたら、売春じゃないし(単なるチャットとアニメーションだ)」ということで、まー大丈夫かなーという話になっている模様。
>ら44%への引き上げ
それが正しいです・・・。情報ありがとうございました。
>新しくもないから駄目だって言われてる
他人がダメだと言っているかどうかは関係ないと思うんですが・・・・。「新しい」と自分で判断した人が、新しいと自分が思う方法でトライしてみればよいのではないでしょうか。
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こんにちは
>myspaceと比べるのはちょっと無理があるという気がしますが。
これは、「ジャンル違い」という事ですか?
SL内の音楽は、だいたい思いつくことはやってみました。
LSLを使って楽器の音がシーケンスするオモチャを作ったり、servを立ててラジオをやってみたり。ライブも実験済みですが、聞いてくれる側が踊ってるけど、あれは、アダルトと同じでナリスマシですからね。メジャーな人がadvとしてやるならともかくと、思います。
mp3を販売できたりすれば俄然変わってくるんですが、環境音とのフリクションは避けられないですし、持ち物をRLでも利用可能にする仕組みも無いですし。L$で取引できるiTMSみたいなものが出来れば変わってくるんですけどもー。
SL的な物が今後webぽく使われる可能性はあると思うのですが、それがSLではないような、もっと使いやすい世界が提供されるような気がしております。
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chikaです。
昨日コメント機能が死んでましてご迷惑おかけしたようですね。すみません。
「音楽を売る」という目的でしたら、確かにそれはMySpaceの方が良いと思います。
SNSでの人間の関係はasynchronousなcommunicationが蓄積する場であり、SLはsynchronous、というところで決定的に違うと思います。
SLは、人々にモノウリの機会を提供するためのインフラではなく、物売りも含めてありとあらゆる社会活動が可能な、その中で完結したメタバースですので・・。
SLはSNSかどうか、という話とは別に、SL内(または他のバーチャルワールドでもよいのですが)で、もっと簡単に音楽を販売できる仕組みを作ればいいのに、というのはそれはもっともな提案だと思います。
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あ、うまくいかないなーと思っていたら、、フォローいただきありがとうございます。
イベントの同時性については、SLとスカイプが同じくらいで、イベントの共有度としては、SLが上。SNSは、イベント共有度は同じぐらいですが、同時性はSLの方が上。くらいに思っています。
メタバースについては色々な考えがあると思うのですが、chikaさんは、RLに還元されないとしてもSLに魅力があると思われますか?1人で2つの世界とも生きるんでしょうか?私がこれをやるには、時間が2つにさけないとRLで頭痛に襲われます。(^^
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>RLに還元されないとしてもSLに魅力があると思われますか?
SLはRLとは独立したものだと思います。人格を別に形成する必要はありませんが、RLとは違う、「ゴッコ遊び」の世界。いわゆる「immersiveな世界」ってヤツじゃないかと。
実際、SL内を観察すると、始めたばかりの人には、現実の世界を持ち込んでいる人が結構いますが、それなりに愛着を持って長くやっている人にはimmersive派が割と多い、という気がします。で、現実持ち込み派は、チャットですぐ相手の年齢を聞いたり、リアルライフのことを根掘り葉掘り聞きたがったりするんですが、immersive派はそういうのを
「デートサイトと間違ってんじゃね?(←とワカモノ言葉を無理して使ってみる)」
と、陰で嫌がってたりします。
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うーん、なるほどー。
僕はこれは壮大なゴッコ遊びだなぁーと思って意外と熱く参加したのですが、ふと気が付いたのは、同じ事をwebでやればよいんでない? 操作が辛くて重たい世界で不自由しながらやってる理由はなんだろう?と思うと、サーっと興味が薄れてしまいました。。。SLでの決まりごとやらなんやらも、事が大きくなれば、サーバの設置箇所に依存すると思いますし。
3Dだったり、とんだり跳ねたりできるんですが、未来志向という意味では、web1.0の方が未来的だと感じるのです。まだ実現してないのは、マトリックスもジュダイの逆襲も同じなのですが、リアリティを感じるのは古い志向で、同じようにwebの方が血肉化していて「なんだか、嬉しい」という事かもしれません。(^^
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高校の授業、漢文で胡蝶の夢というのがありました。
マトリックスの世界ですね。
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