地方にコレクターあり

土曜日から、東京、別府、宮崎とCARZYの出品車両取材に回ってきました。なんとなく東京に日本中の富が集まっているイメージがありますが、なんのなんの。西川淳さんが永年かけて温めたクルマ好き人脈は日本津々浦々に張り巡らされ、色んな地方に驚くようなコレクションを築いてらっしゃるコレクターさんが沢山いらっしゃいます。秘蔵の愛車たちを拝見するたびにその迫力に圧倒され、コレクターさんの情熱の熱さと人間性の奥行きに深く尊敬の念を抱くのです。

確かに不動産や事業を先代から相続された方もいらっしゃいます。しかしこのご時世、油断していたらあっという間に身代が傾きます。そこを維持発展されているのは、ご本人の経営努力の賜ですよね。そして成功されている方は、例外なく魅力的です。経営手腕だけではなく、人間的に惹き付けられるものがあります。地域のクルマ好きグループ内のキープレイヤーとして多くの人をまとめ、ご活躍なさっている姿にこちらも勇気付けられます。



これはネットで拾った「女性ウケする趣味一覧」なのだそうです。ざっとご覧になっていかがですか。私の贔屓目かもしれませんが、大の大人が本気で向き合う趣味としてクルマに代わるものって、そうはないと思うのです。特にクルマの場合は、独りで楽しんでらっしゃる方もおられるでしょうが、やはりクルマ好き同士の人の繋がりができるもの。仕事も生活環境も全く異なる人が、クルマという切り口で交流が始まるその面白さ、意外さ。これはなかなか他にはない醍醐味だと思っています。

CARZYは、このクルマ好きのネットワークを支援したい、新しい出会いを後押ししたい、もっとクルマを楽しめるような機会をご提供したいのです。こうやって現場を回り、クルマ好きの方とのお付き合いが拡がるにつれ、大きな手応えを感じています。全国のクルマ好きのみなさま、どこかでお目に掛かりましょうね!

地方はクルマ社会

若者のクルマ離れ、とよく言われます。ある意味事実なのでしょう。少子化の影響もありますし、長く続くデフレ経済の下ではこれだけ維持費がかかるクルマの所有コストが割高に感じられるのは当然です。しかし、都市部と地方の視点の違いも意識する必要があります。メディアは全て東京発信ですから、地方の実態と生活感を正しく反映しているとは言えないからです。

私の実家は三重県津市。今でこそ県庁所在地ですが、これは市町村合併で津市に併合されただけで、元々は一志郡一志町というド田舎です。最寄りの電車は近鉄ですが、もう何年も前に無人駅になってしまいました。電車を使うのは離れた学校に通う高校生と一部のお年寄りだけで、基本的には日々の移動手段はクルマです。だから各家に大人の頭数だけクルマがあります。殆どは軽自動車ですけどね。歩いて行ける範囲にコンビニもなく、一軒あったスーパーも潰れてしまいました。こうなると食品の買い出しだけでも大変です。役所が買い出しバスを無料運行してくれてはいますが、それも週に二便だけ。それではとても間に合わないので、年寄り世帯にはクルマがないと本気で生活がなりたたないのです。ウチの親父も少々危なっかしいのですが、やっぱりクルマは手放せません。ネットショッピングなんて現実的じゃありませんからね。

クルマの免許がないと、仕事もない。それでは家計が成り立たない。免許の取り消し、イコール、生活の危機。これは地方にいないとそこまでの切迫感を感じられないのではないでしょうか。

この大雨で、公共交通機関はマヒ状態に陥ってしまいました。JR・私鉄は全部ダメ、高速道路もダメ、でも唯一動いているのは地道です。都市部はともかく、地方の場合は最後の交通インフラのキモはクルマなのです。

ここで問題なのは、高齢者の運転です。80代も中盤以降に差し掛かると確かに危なっかしいのですよね。ご本人はまだまだ大丈夫とお思いでしょうが、家族はヒヤヒヤです。実際問題として先に挙げた生活に支障が出るので、クルマを使うなとも言いづらいところがあります。こういうのを見ると、本気で自動運転車が普及して欲しい。ただねぇ、世間の期待ほど早くは実現しないのではないかとも思えます。結局のところ、イレギュラーケースをどこまで許容するかという問題ですよね。確率98%を99.5%に上げるとか、そこに膨大なコストが生じる。現状でも90点のシステムはできていると思います。でも路上駐車や道路工事や子どもの飛び出しなど、想定外のケースって一杯あります。全てに完璧な対応を求めると、たぶん永遠に自動運転車なんて提供できないと思うのです。せめてバスレーンを設けて、自動運転バスだけでも導入したいですよね。それで地方の生活インフラは随分助かりますから。一日も早く社会のコンセンサスが成立することを願っています。

クルマイベントの理想形


Pebble Beach Concours d'Elegance

世界最高のクルマイベントはなにか? そう聞かれたら、迷わずにMonterey Weekend、と答えます。世界トップの自動車大国アメリカ、その底力を否応なく見せつけられる圧倒的なパワー。こんなに華やかな世界が現実に存在するのかと思える、クルマ好きの楽園ウィークなのです。対抗馬はGoodwoodですが、こちらは私はまだ見に行ったことがないのではっきりとはご紹介できません。(この状態で世界トップと断言するなという話ですがw)

Montereyの良さは、複合的なイベントの集積にあります。Pebble Beach Concours d'Eleganceでのコンクール、Rolex Monterey Motorsports Reunionでのレース、各種コンクールやギャザリングが他にも沢山あり、夜はオークション。モントレー半島中がクルマ一色に埋まるこの一週間を楽しみに一年を過ごすカークレイジーが世界中から集うのです。

これを日本で作れないのか。過去沢山の日本人が摸索してきたと思いますが、なかなか形にならない。CARZYが上手く立ち上がったら、これにチャレンジしてみたいですね。多分クルマ業界のしがらみに無縁な私のようなアウトサイダーの方が良い距離感を保てるのだと思います。日本のクルマ社会の層の厚さ、深さを最近つくづく思い知っています。でも残念ながらそのポテンシャルが出せていない。オーガナイザーが狭い自分の商売目線に凝り固まっているのが元凶なんじゃないでしょうか。

理想のクルマイベントを日本に。これも新たな目標ですね。

CARZY The Sports Car Heritage Gathering 2018 KYOTO


CARZY The Sports Car Heritage Gathering 2018 KYOTO

大雨の中、予定通りに京都の北野天満宮にて表記イベントを執り行うことができました。ご参加頂いた皆さま、ご来場のみなさま、そして北野天満宮関係者さま、スタッフ一同、本当にありがとうございました。

当日は警報が出るほどの雨脚で、正直当初エントリーの半分も来車頂ければいいか、なんて西川さんと話していたんですが、結果的にはフルオープンのおクルマが2台だけ欠席されただけでなんと58台もの名車にお集まり頂きました。みなさんのクルマ愛と西川さんへのお気持ちを考えるだけで、感無量です。改めて御礼申し上げます。

当日は、事情で参拝できない西川さんに代わり私が代行で本殿参拝をさせて頂き、全国の天満宮の総本山である北野天満宮さんより交通安全祈願をご祈祷いただきました。そもそもどうしてこのイベントが始まったのかと申しますと、全国の天神さん12,000社は菅原道真の故事にならって牛がシンボルマークとなっているのですが、他の社は全て臥牛(伏した牛)なのに対して、北野天満宮さんだけは全国唯一の立ち牛。この姿がランボルギーニのエンブレムと酷似しているところから、クルマのイベントの話が持ち上がったという背景です。少々強引ですねw

天神さんの七不思議

ランボルギーニ誕生秘話!あの"猛牛"の由来とは!?

このイベントは正式には三回目なのですが、当初は暴走族が騒いでいると警察に通報されたのも笑い話、いまや参拝者から「あの名車が集まるイベントは今年はいつやるのか」とお問い合わせが入るほどの定着ぶりです。我々クルマ好きからすると一般の方に関心を持って頂けるのは嬉しいことですね。EVや自動運転の時代になっても、名車の魅力は人を惹き付けるものなのだと思います。

境内をご案内頂いたあとは、新設された文道会館にてトークショーが開催されました。

・トークショー1
   『京都からクルマの文化と産業を語る』
    産業代表:齊藤壽一氏(堀場製作所副会長)
    文化代表:鮒子田寛氏(京都出身、日本のレース界黎明期の第一人者 日本初のF1ドライバーにしてル・マン24時間レースドライバー)

・トークショー2
   『カー&ドライバー誌表紙作家が語る、クルマのカタチ』
    岡本三岐夫氏×渡邊アキラ氏

京都という伝統文化の担い手が、実は現代のクルマ業界にどれほど深く関与しているのか、クルマ好きも唸る深いお話しを聞かせて頂きました。また、クルマ雑誌の表紙を飾る素敵な原画を前にして、作家本人が制作の裏側を語るトークも普段知ることのない裏話を聞けて興味深かったです。

最後に私どもの新サービス「CARZY.net」のご紹介もさせて頂きまして、これからのクルマ文化をより発展させていくお手伝いをさせて頂きたい旨をお話しいたしました。

15時からは地元警察車両の先導の元、北野天満宮から名車によるパレードをして解散という流れでした。

みなさん、ご無事に帰路につかれましたでしょうか。恐らく普段は絶対に雨の中に出さないおクルマも多かったことと思います。ちらほら帰宅後に愛車を乾燥させてお手入れされている様子も拝見しました。申し訳ない気持ちもありますが、イベントへのご協力のお気持ちを有り難く承りました。ご遠方や札幌や宮崎からご参加の方もいらっしゃいましたので、お一人お一人のお気持ちが本当に嬉しかったです。

このイベントは毎年継続して開催して参りますし、今後はCARZY Live!も復活させて各地でクルマ好きの皆さまにお目に掛かりたいと思っております。どうぞ今後とも宜しくお願い申し上げます!

クラシックカー取引の注意点

恐らく多くの方はクラシックカーを実際に買ったことはないと思います。私もそれほど経験があるわけではありませんが、仕事がら多くの事例を見聞きしてきました。非常に経験の深い方のお話しをお聞きする機会がありましたが、現実の状況は普通の常識とはかけ離れた世界です。

普通の方は、買ったクルマは万全の状態であると信じていますよね。ここがそもそも違います。確かに国産・輸入車を問わず新車をディーラーで購入すれば、それは安心できます。新車保証もついていますから、通常は3年程度はメーカーが品質を保証し、何かあれば無償で交換・修理対応が受けれます。

しかしこれが中古車だとどうなるか。普通は販売店が保証を付けているでしょうね。これはお店によって違いますが、概ね1年、年式の古いクルマでも半年程度は保証を付けるでしょうね。逆に保証を付けれないなら、その店は自信のないクルマを売っているのかという話になります。ここも当たり前として皆さんお考えでしょう。

これがクラシックカーになるとどうなるか。保証はあり得ない世界になります。何故なら、そもそも何十年も昔のクルマが万全のコンディションで保存されていることは皆無に等しく、誰も責任を負えないのです。クルマを構成する部品は3万点と言われていますが、この中にはゴムやパッキン、マウント、シール、などの経年劣化する部品も含まれています。そもそも機械部品が壊れずに動く限界は、普通に考えて10年がいいところでしょう。クラシックカーの世界は製造後何十年、ヘタしたら戦前のクルマを扱うわけです。壊れていない訳がない、という話なんですね。ここを普通の新車や年式の浅い中古車の感覚で考えると、トラブルになります。

極端な話、引き渡されたクルマを受け取ったその場で運転して、動かした途端に壊れた、なんてことが本当に起こります。エンジンの始動一つ取っても、クセのある個体もありますから慣れた人が扱わないと一発で壊れます。半クラッチの扱いも細心の注意が必要です。不慣れな人間が不用意に動かすと、その場で壊れます。これをクレームであげてしまうと、売り手も困ってしまうのですね。ですから、現状渡しでノークレーム・ノーリターンがクラシックカー取引の原則なのです。

そんな世界は怖くて入れない、入りたいけど入れない。そんな人が沢山いらっしゃることと存じます。確かにそれなりに気合いを入れないと踏み込めない世界ではあるのですが、そこでしか得られないワクワクする魅惑の異次元ワールドがあるのも事実なんです。私たちは、この世界への取っ掛かりをご提供したいのです。

怖くて入れない空気を醸し出しているのは、一つには業界のプレイヤーの体質に問題があります。端的に申せば、古いのです。信じられないかもしれませんが、クラシックカー取引の世界では、売り手が主人で、買い手は僕(しもべ)なんです。売ってやる、買わせて頂く、が当たり前。これっておかしいですよね。そもそもは情報の非対称性が存在したからこその慣行なのだと思います。クルマ屋さんの方が詳しかったんですね。しかしこれはネットの時代で様相が一転しています。今や情報収集能力の高い個人の方が、情報に関しては専門のクルマ屋さんを上回ってきていると感じています。時代が変わったのです。

私たちの思いは、このネットの普及した二十一世紀に適した、現代的で透明性の高い合理的なプラットフォームをご提供することにあります。古い業界を、今風のイケてる業界に変えたいのです。そしてこの世界に新しい顧客層を生み出したい。そしてクラシックカーの世界を活性化させ、発展させたいのです。そこにみんなの笑顔が待っているはず。

色々ハードルがあるとは思いますが、このサービスの手応えを感じています。皆さんと繋がれる日がくることを楽しみにしています。

CARZYが目指すもの

トヨタの豊田章男社長は言いました。「愛と付く工業製品はクルマくらいですよね」と。そう。家電やスマホに愛という言葉はあまり使いませんよね。でも自分の愛車をそれこそ子どものように愛でるクルマ好きは沢山います。それだけクルマというのは思い入れの持てる、愛着の湧く存在なのです。

いま、100年ぶりにクルマ環境が激変しつつあります。移動の手段としての社会インフラの側面が強くなり、自動運転やシェアリングサービスなど、どんどんクルマがコモディティ化していきます。それは社会の要望に応える道ですから、否定はしません。しかし、一定数のクルマに愛を求める層の気持ちは置いてきぼりなのです。CARZYはCar Crazyのために、思い入れを持てるカーライフの充実に貢献したいと考えています。

私たちはそのために、コレクタブルカーの個人間売買サービスをご提供しようと考えました。対象をコレクタブルカーに絞ったのは、愛着を持てる対象としてのクルマにフォーカスしたいからです。ミニバンや軽に存在価値がないとは言いませんが、次世代に残す価値のある趣味性の高いクルマとしては対象にしない。クラシックカー、スポーツカー、希少車、そういった愛すべきクルマ達をまずは専門に取り扱いたいのです。

個人間売買サービスというコンセプトは、現状の中古車業界について恐らく多くの人が感じている問題点を解決するための手段として考案しました。ネットというディープインパクトがもたらされて早20年が経ちますが、いまだにクルマ業界は古い体質を抱えたままです。沢山の分野で情報の非対称性が解消されつつあり、数多のマーケットプレイスが市場の歪みを補正してくれています。いまやネットで消費者が必要な情報を入手できて当たり前。なのに、中古車に関してはあまりに仕組みが古いのです。それは趣味車の分野において顕著。クラシックカーに興味はあっても入っていけない。難しそう、だまされそう、なんだか怖い。そんな印象を一般のクルマファンは拭いきれず、派手なパレードを遠巻きに眺めているだけだったのです。

何が原因か。私たちは、透明性の高いマーケットが整備されていないことに原因があると考えました。コンセプトのイメージは明確。「趣味車の分野におけるメルカリ」です。売り手と買い手が直接つながる、オープンで透明性の高い現代的な取引市場が求められているのではないでしょうか。これは中間業者の中抜きと考えられるかもしれません。確かにその側面は否めませんが、それ以上に公明正大なマーケットの創出は新しい大きなユーザー層の創出につながると信じてもいます。多少の摩擦があったとしても、結局は業界全員の幸せに結びつく。それは歴史が証明する真理だと思います。

いま、少しずつ準備を進めています。最初に公的な場所でお披露目させて頂くのは、5/13(日)の北野天満宮でのイベントです。CARZY The Sports Car Heritage Gathering 2018 KYOTOでお目にかかりましょう!

ユーザーインタビューの重要性

いまCARZYの立ち上げ準備中なので、初期のターゲットユーザーさんにプレゼンとインタビューに歩いています。まだ始まったばかりですが、ここで得られる気付きはとても貴重です。早速ビジネスモデルの修正点が幾つもあります。これをせずにサービスをリリースしていたら大変なことになっていたはず。新規ビジネスの立ち上げに必須のプロセスと言えますね。

おちゃのこネットを立ち上げた2004年あたりには、まだこういう手法が共有されていませんでしたが、今はベンチャー向けの教科書に全部書いてあります。知識が蓄積され、伝承され、成功確率の高い方法がシェアされていく。いいことです。

ベンチャーのリスクが低減して期待値が高まれば、それだけ優秀な人を引きつける吸引力になります。それは社会の活性化にとてもプラスになること。親が子供に起業を勧める。そんな社会の実現を目指します。

所有かレンタルか

BMWとレクサスも車のサブスクリプションを目指す

高額な買い物の代表は住宅とクルマ。そのどちらにも所有するのか、レンタルか、という選択肢があります。住宅についてはバブル期までの右肩上がりの地価上昇サイクルが崩れ、長期のローンを組んでまで所有するのが本当にいいのかという機運が高まっていると感じます。これから少子高齢化、人口減社会を迎えるわけですから、特に若い世代には親の持ち家がほぼ確保されているわけで、先行き不透明だし当面は賃貸で間に合わせておこうという人が増えているのだと思います。当然ですね。

クルマも然り。そもそも運転免許を取らない若い人も増えているようですし、これだけカーシェアリングや自動運転や配車アプリなどの環境変化があると、クルマを買う人が減るのも当たり前です。そしてこのサブスクリプション型の販売方式。月額で定額を払えば、自由にクルマを変更できるし保険料や維持コストを含めることもできます。レンタルと所有の中間というカンジですね。

このように必ずしも皆がクルマの所有に拘らなくなるとどういうことになるか。私見ですが、今よりもクルマ全体の売上は減るでしょうね。それは殆どのクルマの稼働率が低く、大部分の時間はガレージで眠っているのが社会全体で効率化に向かうからです。そして、割合の減る所有する対象のクルマには趣味性が重視されるでしょう。つまり実用性をシェアリングに委ねて、本当に持ちたいスポーツカーや面白いクルマだけを所有するようになる。楽観的に考えれば、これから趣味のクルマのバリエーションが増えて楽しい時代になると期待できます。

私の見通しが当たってほしいですが、答えはこれからの10年で見えるでしょう。どちらにしろ、自動車が発明されて100年、激変期を迎えているのは間違いありません。

マツダはどうやって立ち直ったか


日経ビジネス誌に「マツダー変革への挑戦」という集中連載記事が掲載されていました。最近、マツダは元気ですよね。でもほんの数年前までは、経営は絶不調でした。ある程度のご年配の方は”マツダ地獄”というフレーズをご存知でしょう。マツダのクルマは下取りの人気が極端に悪く、一度マツダ車を買ったら次の買い換えもマツダディーラーで下取りしてもらうしか値が付かない、永遠にマツダ車のサイクルから逃れられないと揶揄されたのです。経営というのは、一度落ち目になるとそれを立て直すのは至難の業。今の好調マツダを実現するために経営陣がどれほどの努力を重ねたことか、そのご苦労に本当に頭が下がります。では、その復活のストーリーとはどんなものだったのでしょうか?

六回ほどの記事を私なりに要約すると、大事な骨子は以下の通りです。

1.PDCAのPにフォーカス
 これは私も反省するところが多々あるのですが、多くの企業で起きているのはいい加減なPlanの尻拭いをCheckしてActionする悪循環です。
一般的に、仕事って、あまり考えなしに始めたことで起こった問題を、現場が大奮闘して解決する、ということが多くないですか。
マツダで起きていたのは、各モデルを各担当者がおのおのでプランニングして、戦略的思考が不充分なままで開発に着手していた。出来上がってきたクルマは魅力に欠け、当然市場に出しても売れない。
誰だって、一生懸命やったことがムダになり、「やりなおし」になるのは嫌じゃないですか。私もすごく嫌だった。それをバブル期にさんざん経験して「売れないクルマを頑張って作るほど悲劇的なことはない」と思った。じゃあ、最初からムダな仕事が起きない仕組みを考えてみよう、と意識した。
マツダは10年先に自分たちがありたい姿、目指す理想を全員で話し合うところからスタートしました。そこでマツダが策定した長期目標とは何か。
マツダの全ラインアップが世界のベンチマーク、つまりは世界一を目指す。
驚きですよね。世界一を目指す、と明言したのです。しかし当然この目標設定には前提条件があります。あらゆるクルマで世界一を目指すのは、それは無理です。自分たちのモデルラインナップを決め、どのサイズの、どんなクルマで10年後に商売するのかを定めました。でないとトヨタやVWのリソースと全戦線で戦うのは無理に決まっているからです。そこでマツダはハイブリッドを捨てました。エンジンを磨くという取捨選択をしたのです。これがSkyactiveに繋がります。そしてワンボックスからの撤退。MPVは一定数売れていたにも拘わらず販売を止めて、SUVに特化したのです。そうすることで統一のマツダデザインを構築する事もできました。これはフルラインナップのトヨタ・日産・ホンダにはできない弱者ならではの戦略と言えるかもしれませんね。勝てる戦略をPlanの段階でとことん考えたからこそ生まれたのが、今私たちが見ている新生マツダの姿だったのです。

2.全社の開発環境を統合
 上記のPlanを実行するにあたり、重要だったのが社内の開発環境をデジタルで統合したことです。今まで各パートごとにバラバラに設計・開発・製造していた現場を、デジタルでデータが流れるようプラットフォームを整備しました。これがMDI(マツダデジタルイノベーション)でした。今は自動車メーカー各社同じようにデジタルプラットフォームを導入していますが、それを本格的に取り入れたのはマツダが早かった。これも規模の小さなメーカーだったからこそのフットワークの良さだったのでしょう。これは私の私見ですが、現代の仕事で最も重要なのはコミュニケーションだと思います。何故その意志決定が行われたのか、それに対してどのような修正要求が発生しているのか、誰がどうアクションしたのか。こういうプロセスを関係者全員が共有することで、自分が何をすべきなのか、自分の立ち位置と方向性が見えてきます。言われたことをただやるだけではなく、一人一人が自分の頭で考えて動くことが要求されている現代の職場では、このコミュニケーションが機能することが決定的に重要です。大事なのは実は、そのプラットフォーム上でどんな情報を流すか、なのですが。恐らく、会社の中で非公開の方がいい情報というのは、各人の給与データだけなのです。それ以外は、全部オープンでいい。私はそう思います。経営の数字を全員が共有することで、自分たちのポジションで何をすべきかが見え、やったことが成果として出ているのかどうか評価することが可能になります。仕組みを使いこなす器量が経営陣には求められます。

結果としてマツダはこの改革をやり遂げ、直近の決算で過去最高益という結果を残します。その結果を知っている私たちから見ると、ああそうか、としか感じませんが、ここに至るまでどれだけ迷い、苦しみ、考え、もがいてここに至ったか、経営陣の苦悩は相当だったと思います。どんな会社も右肩上がりでずっと調子良く発展できるわけではありません。必ず落ち込む時がきます。あまり悲観せずに、マツダのような復活事例を心の励みに、やるべきことに取り組んでいきたいと思います。大事なのは、まず志を立てるところですね。

自動車取引へのエスクローサービスの導入

3分でわかる!ECサイトでエスクローを導入する際の法的問題とは?

Wantedlyで求人広告に書いちゃってますから隠してもしょうがないんですが、いまCARZYで自動車の個人間売買サービスを準備中です。ある程度の高額車両が対象ですので、当然決済に不安が出てくるわけです。特に買い手側にとっては、ちゃんとしたクルマが届けられるのか、キャンセルした時は払い込んだお金が返ってくるのか、が気になると思います。売り手にしても、ちゃんと代金が支払われる見通しがなければ大切なクルマを送り出せない、というのが当たり前でしょう。これを解決する手段が、エスクローサービスです。

エスクローサービスとは、元々オークションなどでよく使われる、第三者による安心な取引のための第三者預託サービスです。つまり、売り手と買い手の間に善意の第三者が入ることで、代金が払い込まれていること、ちゃんとした商品(ウチの場合はクルマです)が届けられたことの確認、売り手への確実な入金、が確実に行われることが約束されます。

とても良い仕組みなのですが、実は近年フリマアプリが盛んに使われるようになるに従って、このエスクローサービスをEC事業者が提供することに法的な問題があるという指摘がされています。

急成長「メルカリ」にはどんな法的リスクがあるか ー 「預り金規制」に違反の疑い

私も最初は自社でエスクローサービスを提供しようと思っていたんですが、顧問弁護士さんに法令を指摘されて慌てました。どうも多くのC2Cサービスはここをちゃんとクリアしていないみたいですね。今回、参考例として自動車の個人間売買サービスを幾つか調べましたが、どこも資金移動業者の登録はしていない模様です。そもそもこの免許、登録しても100万円以下の取引しか扱えないという制約があります。フリマアプリを想定しているからそんな縛りになっているのでしょうが、クルマを扱うとなると上限100万円では話になりません。なのでどこも「決済代行+代理受領」スキームで逃げているんですね。しかしこのスキームは、実は買い手に多大なリスクを押し付けていることになるのです。例えば、クルマが買い手の手元に届いた時に想定していたものと違った時、当然キャンセルして取引を中止したいですよね。で、払い込んだ代金を返金してほしいという話になりますが、恐らく代理受領のスキームだと返金が難しいと思います。売り手の代わりに代金を受け取る形なので、売り手の同意なしに勝手に買い手に返金する権限がないのです。これはいざトラブルが起きてみないと気付かないポイントだと思いますが、買い手はここまで理解してサービスを利用していないでしょうから非常に不親切な仕組みと言えます。

CARZYはそこを外部のエスクローサービスを導入することで抜本的に解決します。第三者によるエスクローサービスによって安全にクルマの代金を預かり、取引が不調の場合はちゃんとキャンセル処理してご返金できるスキームです。勿論、CARZYの倒産などの不測の事態でも預り金は保全されますし、ペイオフ対象外なので全額払い戻しが担保されています。ちなみに海外では非常に手軽なエスクローサービスが幾つもありますので、ご紹介しておきましょう。

ESCROW.COM
 自動車取引を想定した説明ページが用意してあり、$25,000以上の取引で0.89%と良心的な手数料設定です。仮に5万ドルのクルマを取引すると$445の手数料。

Payoneer
 $50,000から$500,000の取引ゾーンで$525 + 0.75%の手数料設定なので、5万ドルのクルマだと$900の手数料ということになります。

残念ながら両社共にJPYが取り扱いできず、日本向けにエスクローサービスは提供していませんので使えません。しかしフィンテックを体現しているような身軽さと敷居の低さは日本企業にはないところ。アカウト登録はオンラインで完結しますし、取引登録も画面から簡単で、APIを実装してシステム連携も可能です。こういうサービスを見るといかに日本が遅れているかよく分かります。

というわけで最大の懸念だったエスクローサービスの目処がついたので、サービスの実現に大きく前進しました。まだお見せできるには時間が必要ですが、いいご報告ができるよう頑張ります。

技術の分かる経営

「ずっとむなしい、なにもなく終わる・・・」 マツダの天才エンジン技術者、大逆転の軌跡
(2018.3/10(土)の5時までは無料で読めるそうなので、ご興味のある方はどうぞ。)

はてブで沢山のコメントが付いていたので読んでみました。感じたのは、経営陣が正しい技術の目利きができるかどうかで会社の浮沈は大きく変わってくるんだなということです。幾つか印象的なコメントをご紹介。
先行開発部門や研究所には、見た目の成果をほとんど出せないままに何十年間を過ごす人がいっぱいいる。
これは辛い。モチベーションを持ち続ける自信がないです。
スカイアクティブの開発が始まったのは、2012年に始まるとてつもなく厳しい規制に対応しなけりゃならんことがきっかけです。
規制が転機になったと。外圧でイノベーションが加速されたわけですね。このあたりがクルマ業界とIT業界のスピード感の違いなんですよね。IT業界は外圧の連続で息を抜くヒマがない。これをシンドイと思うか、競争環境がリセットされるチャンスの多い業界と思うか。
私に運があるのかないのか。運のあるなしは、自分の見方次第ですから。自分より不幸な人を見てマシだと思うのか、自分より幸せな人を見て、俺は何と不幸だと思うのか。私は真ん中くらいかな。最後にモノにできて、最悪ではなくなった。会社人生の大半を最悪だと思ってましたけど。
これ、今の若い人に同じ我慢を要求するのは無理があるでしょうね。昔は我慢していても業界と会社全体が成長していたから、自分の給料もポジションも自然と上がっていった。成長しない時代に同じロジックを持ち込んでも、若手は我慢の代償が得られない。チャンスの多い環境に移って社会全体が流動性を高めた方がみんなの幸せになるんじゃないかなと思えます。
マツダには、金がないんです。でも貧乏だからこそできることが絶対にあるんです。
それが新しい考え方や技術の導入、つまり工夫ということなのでしょうね。小さい会社がリソースの少なさを嘆いていても始まりません。それは当たり前。自分達の強みを探さねば。
メーカーによって、理解の度合いがまるで違います。ぐずぐず考える前に金を使って試作機を早く造ることを自慢する会社は、モデルベース開発への理解が遅いですね。
なまじカネがあるとイノベーションが進まないと。
今のところ量産開発を担当した技術者が研究所に移ることをあまりしていないので、今後はやりたいんです。
人事交流って大事だと思います。人がコンテンツ。混ぜちゃうと化学反応が起きる。
技術研究所のテーマは、ロードマップに沿う形にしました。究極のエンジンの姿を考えて、到達する道筋をどう実現するのか最初に示すんです。ぱっと思いついたアイデアで研究しません。ロードマップに沿うテーマを考えれば、採用される可能性が上がるでしょ。
この正しいロードマップを示せるかどうかがキモだと思います。気の利いた人がいないと見通せないし、その人を重用するだけの見る目が経営陣に必要。

さて、自分達はどこまでできているのか、我が身を振り返ってしまいました…。

中抜きというトレンド

今CARZYで新しいクルマのサービスを仕込んでいます。コレクタブルカーマーケットを活性化してやろうと目論んでいるのですが、コアとなるコンセプトはクルマ屋の中抜きです。当然既存の勢力から反発はあるでしょうが、特別なしがらみのないウチだからこそ可能なサービスだと思いますので、思い切って波紋を起こしたいと思います。全ては不透明な商売へのユーザーの不満が発端。時代は21世紀なのですから、新時代のクリーンなプラットフォームがあってしかるべきなのです。今日もそのための仕込みを少々。業界にインパクトを与えたいですね。ご期待下さい!

BHオークション始動



幕張メッセにて第一回の「BHオークション」が開催されました。弊社パートナーの西川淳さんが運営に携わっており、日本国内初の本格的なコレクタブルカーオークションということで会場を訪れて様子を拝見してきました。



幕張メッセに到着すると既にオークションが始まっており、館内のTVで様子が生放送されていました。来場者の皆さんも興味深そうにご覧になっていましたね。恐らくこういうオークションの現場を生で見ることは非常に珍しい体験のはず。クルマ屋さんでない限り業販オークションも見たことないですものね。イベント会場は一般来場者にも無料開放されていましたので、二階席は6割くらいの入りでしたが皆さん楽しまれていたと思います。



私もアリーナに移動して、友人と一緒にオークションを観戦。外国人ビッダーも相当数来場されており、クルマによっては熱い入札合戦が行われていました。私はモントレーのRMオークションしかちゃんと見たことがなかったので今回ののんびりしたコンダクト振りに驚きましたが、知人曰くペブルビーチオークションもこんなカンジのスローペースだそうで各オークションのカラーということなんですね。ペブルは上流階層がターゲットなのでスロー、RMはもっとアグレッシヴということだそうです。ここはオークショニア(今回はChris Peppler氏)の選定を含めた演出の問題です。これはそもそもどの会場で開催するか、客層は、出品車両のラインナップは、などによって大きく変わる部分なので、何が正解とも言えない。主催者も初めての事で手探りだったと思うので、私は今回の会場の盛り上がりからして成功だったと思います。本当は自走で入退場して欲しかったり、もっとタイトな空間で熱気を感じさせて欲しかったりと個人的な要望はありますけど、全てはこれから。ともかく日本のコレクタブルカーマーケットに大きな刺激を持ち込む狼煙にはなったんじゃないでしょうか。



これからCARZYもこのマーケットに参戦しますから、どうぞご期待下さい!

Apple Car Playの破壊力

弊社は自社ECサイトとして「カーナビ専門店コンタクト」を長く運営してきました。当初のカーナビ本体販売から、取り付けサービスの提供、取り付けキットの販売、と微妙にビジネスモデルをピボットしてきています。零細ショップといえどもやはり時代のトレンドに追従し自社の立ち位置を修正し続けなければ生き残りは不可能なのです。ビジネスモデルの賞味期限がどんどん短くなっている昨今、これはどんな規模の商売でも同じ事情だと思います。



今日、初めてAppleのCar Playという規格に対応した純正ナビを触りました。ああ、これでもう市販カーナビの存在意義はなくなってしまったな、というのが正直な感想です。厳密にはまだニッチな用途でニーズは残っていますが、iOS(Android対応の車載端末もリリースされています)がネイティブ環境として車載OSに採用されてしまえばこれがファイナルアンサーであることは誰の目にも明らかです。カーナビというカテゴリーがスマホに完全に支配されてしまった現実を突きつけられて、カーナビ屋としては辛い思いを致しました。



しかし、これがイノベーションというものなのです。技術の進歩発展というのはこうして古いシステムを破壊してしまいます。そこを嘆いても何も始まりません。水の流れに逆らうのではなく、流れに乗ること、利用することを考えるのが商売人のやるべき勤めであり知恵の見せどころ。危機ではなく新しい機会であると捉えるべきですね。今、新規事業の準備をしているのはそういう理由です。未来は誰かに用意されるものではなく、自分で切り拓くもの。私はそう考えています。経営者が挑戦する気持ちをなくしたら、それは引退する時ですよね。

シェアリングでパイは大きくなる?

なぜシェアリングエコノミーは経済を拡大するのか



購入方法のバリエーションが増えれば必ずパイが拡大するのが経済の基本
と言われれば、私も渡辺さんと同様にえっと思います。カーシェアリングが普及すれば自家用車を買わなくなるから自動車メーカーの売上は減るよね、トータルで社会全体のクルマ保有台数は減ってエコだよね、というのが常識だと思います。それが全体のパイが増えることになると言われると直感的に納得出来ないのは当然だと思います。しかしこのエントリーで千賀さんが述べていることはとても自然で、私も「そうか、パイが大きくなるということは充分あるな」と思えました。



今まで家族四人が荷物を積むことを考えるからミニバンを買っていた家庭が、普段使いはカーシェアリングで済ませて、自分が保有するクルマは趣味のスポーツカーにする、ということが充分起こり得ると思うのです。実際はミニバンを一人で運転することが圧倒的に多いわけですから、使い方の一番ヘビーデューディなシーンを想定してクルマを買っている購買行動が変化する可能性は高いです。千賀さんが
これまで所有以外に手がなかった洋服市場にレンタルが本格的に広がればその市場は広がるだろう。例えば、私が常に「変な服」を借り続けるように、これまでの大量生産時代とは違う価格帯・デザイン性の、ごくニッチなものが流通するようになるはず。これまでの大量生産型のファッションがなくなるとは思わないが、今まで食べていけなかったような限られた市場しかなかったデザイナーがもっとデザインを仕事にすることができるようになるのではなかろうか。
と書かれている通りのことが実現するのではないでしょうか。



今までカーシェアリングやホームシェアリングなどの共有経済は全体のパイを小さくしてしまうという心配をしていましたが、その未来が案外明るいものになるなら歓迎です。エコではないかもしれませんが、私は技術進歩主義者なので。この話はまた。