深圳訪問記

週末に香港・深圳を訪問してきましたので、その感想を記しておきたいと思います。

私が今さらお書きするまでもなく、深圳の発展振りはよく知られています。それでもまだ現地を訪れたことがある人は少ないでしょう。まだ深圳に行ったことのない人、特に若い人に言いたい。是非、深圳に行ってみて下さい! そして自分の目で現地の雰囲気を体感して下さい。きっと凄いインパクトがありますから。

深圳のインパクトは入国イミグレーションからスタートします。最近は電子が進んできましたが、中国は共産党の政策が個人のプライバシーに優先する国。当然ながら入国者は全員指紋と顔写真の登録が必須です。今は横断歩道で信号無視しただけで、大型ディスプレイに顔写真がデカデカと表示され、個人宛に違反がメールで通告されるのだそうです。いくら市民が監視体制に反対でも有無を言わさず強行してしまう怖い国です。これはある意味アメリカや西側先進国にはない中国の強みになっています。政府がどんどん新しい技術を導入してしまうので、中国のITが世界最先端のショールームになっているのです。情報の検閲もなくならないでしょうが、新技術の実現スピードも世界一。これは侮れません。壮大な社会実験が行われている国と言えますね。

深圳の駅前に着いてガイドさんに教わったのが、市内を走るクルマの殆どが電気自動車であること。特にバスとタクシーは完全にEV化されていて、音がしません。バイクも全て電動です。これは新規に発行されるナンバープレートがEVに限定されているからなのだそうで、お蔭で深圳では空が青いです。PM2.5で煙る北京とは大違いです。走っているクルマもBYDが多く、国産車がメインになっています。市内ではベントレーやフェラーリなどの高級車もそれなりに見かけましたが、中国独自モデルが主体で独特のマーケットだなと感じました。ちなみにですが、中国では外国から中古車を輸入することは禁止されています。これは国内のEV保護育成政策に則ったもので、恐らく将来に渡っても解禁されることはないでしょう。なので中国でクラシックカーに興味がある好事家は香港や外国に自分のクルマを保管して愉しむしかないのです。そういう富裕層もかなりの数に上ります。

これは華強北の電気街。恐らく秋葉原の数百倍の規模だと思います。デカいビルのワンフロアにぎっしり電子部品の専門ショップが詰まっていて、それがビル全体を埋め尽くしています。そのビルが大通りを挟んで両側に拡がっているのですから、もう全体像を把握することはできません。これが年々まだ増殖していると聞くと、底知れぬ中国の製造パワーに怖さを感じます。近年は上昇する人件費もあり、深圳自体は製造業を市外に排除する方向らしく、東莞や恵州に工場が移転しているのだそうです。それでも深圳が世界中からバイヤーが集まる製造業の聖地であることに変わりはなく、その規模にただただ圧倒されます。日本の製造業が空洞化して久しいですが、その行き先がここだったのですね。ここには試作から量産に至る全ての機能があり、どんなものでも三日もあれば試作品が上がってきます。ハードウェア系のベンチャーにとっては深圳を拠点に事業を立ち上げることが成功への最短ルートなのです。

これが深圳のベンチャープラザ。ここにはベンチャーキャピタル、法律事務所、ほかベンチャーに必要なものが全て揃っており、全世界から一発当ててやろうという野心に燃えた若者が集まっています。最近は日本からも若手起業家がここに入居しており、国境を越えてアグレッシヴにやっている若手がいることを嬉しく思いました。香港と深圳に在住の日本人ビジネスマン/ウーマン何人かに話を聞いたのですが、多くの日本人はとにかく動かない、と口を揃えて嘆いていました。せっかく破格の条件で中国企業が迎えようとしても、最後に家族の反対などで決められない。チャンスを逃すと。日本国内の閉塞感に慣らされているからなのか、日本人は消極的、という評価が定着してしまっています。これは本当に残念。若い人にこそ、国境を越えて成功するチャンスにチャレンジしてほしいですよね。実はいまはまだ中国の大学に留学する学生が少ないので、中国留学は狙い目なんですよ。日本国内の二流大学でだらだらと四年間を過ごすくらいなら、思い切って深圳に飛び込んでみてはどうでしょうか。きっと人生がいい方に大きく動くと思うのです。

これがテンセントの新本社ビル。あまりに大きくてカメラに収まり切りません。今や時価総額は世界トップ5。テンセントのゲームをしなくても、WeChatとWeChat Pay抜きでは生活は成り立たない。中国における存在感はGoogleやFacebookの比ではありません。HUAWEI、DJIと並んで深圳を代表する成功例ですね。

私も正直なところは、中国のバブルも佳境で、さすがにそろそろ崩壊するだろう。さすがにこのままアメリカを抜いて発展し続ける事はない、と思っていました。確かに不動産市場は上げ底なところもあるでしょうが、それでもこれだけの巨大な資本の蓄積を目の前に見せつけられると、理屈が圧倒されます。現実の持つ重みというか、迫力。それに全てがかき消されてしまうと感じました。考えてみると、中国は歴史上ずっと世界の中心でした。四大文明の発祥の地であり、秦・漢・随・唐など、歴代の王朝がアジアを支配してきたのです。近代においては西洋に蹂躙されて遅れを取りましたが、歴史上の定位置、すなわち文明の中心に今また返り咲こうとしているだけなのかもしれません。共産党という存在が西洋の民主主義からは遅れたものに見えてしまいますが、中国国民にとっては広大な国を治めるための統治システムの一つくらいにしか思っていないのかもしれませんね。中国では、上場企業の役員よりもラーメン屋の親父の方が上なのだそうです。それくらい商売と独立心旺盛な13億人の民のメンタリティは、共産主義なんかに染まってはいません。そのベースがあるからこそ、これだけ短期間に目覚ましい発展を遂げた理由があるのではないでしょうか。中国全土の省と特別市が成果を競い合う健全な競争原理が、中国というマーケットを健全にしています。腐敗対策などの課題もありますが、今のところ共産党幹部は非常にクレバーに問題に取り組んでいるように見えます。何を決めるにも時間ばかりかかって前に進めない日本とは大違いです。

深圳という年の平均年齢は32.5歳なのだとか。実際に街を歩いていて、全く年寄りを見かけませんでした。この若さが深圳のパワーなのです。このモニュメントには「来了就是深圳人」とあります。深圳に来れば、あなたも深圳人。中国もご多分に漏れず、よそ者には冷たい社会です。上海や北京では地元の人間に外から来た外様が溶け込むのは至難。学校では言葉の違いでイジメに遭いもします。それがたった30年で発展した深圳にはないのです。全員がよそ者であり、そこに差別も区別もない。全員がフラットにチャンスを追う新天地。それが深圳なのです。アメリカの開拓精神に近いですよね。帰りに立ち寄った香港が年寄りで溢れていたのとは対照的な光景。それは日本との対比にも見えます。日本はこのまま斜陽の道を辿るしかないのか。それとも聖徳太子的なメンタリティを取り戻して、もう一度日のいづる国として輝きを放てるのか。今が勝負時な気がします。

鄧小平は言いました。先に豊かになれる者が豊かになれ、と。今の日本においては、先に挑戦する気持ちのあるものが外に出よ、だと思います。全員が国境を越えて海外で勝負できるわけではありませんが、一部にですが攻めている人はいます。彼ら彼女らの背中を見て、成功例を追う若者が一人でも多く出てきてほしい。そこにしか日本の活路はないと思います。

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