マツダはどうやって立ち直ったか


日経ビジネス誌に「マツダー変革への挑戦」という集中連載記事が掲載されていました。最近、マツダは元気ですよね。でもほんの数年前までは、経営は絶不調でした。ある程度のご年配の方は”マツダ地獄”というフレーズをご存知でしょう。マツダのクルマは下取りの人気が極端に悪く、一度マツダ車を買ったら次の買い換えもマツダディーラーで下取りしてもらうしか値が付かない、永遠にマツダ車のサイクルから逃れられないと揶揄されたのです。経営というのは、一度落ち目になるとそれを立て直すのは至難の業。今の好調マツダを実現するために経営陣がどれほどの努力を重ねたことか、そのご苦労に本当に頭が下がります。では、その復活のストーリーとはどんなものだったのでしょうか?

六回ほどの記事を私なりに要約すると、大事な骨子は以下の通りです。

1.PDCAのPにフォーカス
 これは私も反省するところが多々あるのですが、多くの企業で起きているのはいい加減なPlanの尻拭いをCheckしてActionする悪循環です。
一般的に、仕事って、あまり考えなしに始めたことで起こった問題を、現場が大奮闘して解決する、ということが多くないですか。
マツダで起きていたのは、各モデルを各担当者がおのおのでプランニングして、戦略的思考が不充分なままで開発に着手していた。出来上がってきたクルマは魅力に欠け、当然市場に出しても売れない。
誰だって、一生懸命やったことがムダになり、「やりなおし」になるのは嫌じゃないですか。私もすごく嫌だった。それをバブル期にさんざん経験して「売れないクルマを頑張って作るほど悲劇的なことはない」と思った。じゃあ、最初からムダな仕事が起きない仕組みを考えてみよう、と意識した。
マツダは10年先に自分たちがありたい姿、目指す理想を全員で話し合うところからスタートしました。そこでマツダが策定した長期目標とは何か。
マツダの全ラインアップが世界のベンチマーク、つまりは世界一を目指す。
驚きですよね。世界一を目指す、と明言したのです。しかし当然この目標設定には前提条件があります。あらゆるクルマで世界一を目指すのは、それは無理です。自分たちのモデルラインナップを決め、どのサイズの、どんなクルマで10年後に商売するのかを定めました。でないとトヨタやVWのリソースと全戦線で戦うのは無理に決まっているからです。そこでマツダはハイブリッドを捨てました。エンジンを磨くという取捨選択をしたのです。これがSkyactiveに繋がります。そしてワンボックスからの撤退。MPVは一定数売れていたにも拘わらず販売を止めて、SUVに特化したのです。そうすることで統一のマツダデザインを構築する事もできました。これはフルラインナップのトヨタ・日産・ホンダにはできない弱者ならではの戦略と言えるかもしれませんね。勝てる戦略をPlanの段階でとことん考えたからこそ生まれたのが、今私たちが見ている新生マツダの姿だったのです。

2.全社の開発環境を統合
 上記のPlanを実行するにあたり、重要だったのが社内の開発環境をデジタルで統合したことです。今まで各パートごとにバラバラに設計・開発・製造していた現場を、デジタルでデータが流れるようプラットフォームを整備しました。これがMDI(マツダデジタルイノベーション)でした。今は自動車メーカー各社同じようにデジタルプラットフォームを導入していますが、それを本格的に取り入れたのはマツダが早かった。これも規模の小さなメーカーだったからこそのフットワークの良さだったのでしょう。これは私の私見ですが、現代の仕事で最も重要なのはコミュニケーションだと思います。何故その意志決定が行われたのか、それに対してどのような修正要求が発生しているのか、誰がどうアクションしたのか。こういうプロセスを関係者全員が共有することで、自分が何をすべきなのか、自分の立ち位置と方向性が見えてきます。言われたことをただやるだけではなく、一人一人が自分の頭で考えて動くことが要求されている現代の職場では、このコミュニケーションが機能することが決定的に重要です。大事なのは実は、そのプラットフォーム上でどんな情報を流すか、なのですが。恐らく、会社の中で非公開の方がいい情報というのは、各人の給与データだけなのです。それ以外は、全部オープンでいい。私はそう思います。経営の数字を全員が共有することで、自分たちのポジションで何をすべきかが見え、やったことが成果として出ているのかどうか評価することが可能になります。仕組みを使いこなす器量が経営陣には求められます。

結果としてマツダはこの改革をやり遂げ、直近の決算で過去最高益という結果を残します。その結果を知っている私たちから見ると、ああそうか、としか感じませんが、ここに至るまでどれだけ迷い、苦しみ、考え、もがいてここに至ったか、経営陣の苦悩は相当だったと思います。どんな会社も右肩上がりでずっと調子良く発展できるわけではありません。必ず落ち込む時がきます。あまり悲観せずに、マツダのような復活事例を心の励みに、やるべきことに取り組んでいきたいと思います。大事なのは、まず志を立てるところですね。

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