銀行の役割って?

私が就職した平成元年はバブルの絶頂期だったので、友人の多くが金融機関に就職しました。銀行にも何人かの知人がいますのであまりこういうことを書くのはよくないのですが、それでも時々感じてしまいます。「日本の銀行の役割ってなに?」と。今もとある案件があり、大手都市銀行に融資の依頼をしています。担当者は、銀行独自に融資をするのはリスクが高いので保証協会の保証を取ります、と。で、獲得してきた保証枠はこちらの希望額には満たない中途半端な金額。それじゃ役に立たないんですが…。

これ、そもそもおかしくないですか。だって、リスクを負っているのは保証協会じゃないですか。銀行は右から左に案件を繋いで利益を乗っけてるだけで、自分たちは何もリスクを冒していない。これ、子どもにでもできる仕事だと思いませんか。いわゆる付加価値を何も生み出していないんです。これで高い給料取ってる理由が分かりません。その原資はどこから出ているんでしょうか。多くの人が疑問に思わずに毎日垂れ流している振込手数料なのでしょうかね。

おカネの三大機能とは、価値の交換(決済)・価値の表明(価値の大きさを表す)・価値の貯蔵、にあります。その意味では、おカネを預かって、決済をしていればそれで金融機関としての最低限の仕事はしていることになりますが、本来の役割は信用の創造にあると思います。住宅ローン、自動車ローン、運転資金の貸与、設備投資、そしてM&A。預金者からおカネを預かって、貸し出す。そのスプレッドで利益を取る間接金融の仕組みでは大きなリスクを取れないのは当たり前ですが、それでもこれだけ世の中におカネが余っている現代ではハイリスク志向でないと仕事にならないのです。古い枠組みから脱却できずにもがいているのはどの銀行にも共通の悩みなのでしょうね。

今回のウチのニーズはM&A資金の調達なのですが、実はLBO(レバレッジド・バイ・アウト)という便利な仕組みがあります。簡単に言うと、買収先企業の資産を担保に借り入れを行うというとても都合のいいスキームなのですが、対応できる金融機関には限りがあります。独自の与信管理のノウハウと経験がモノを言うのですね。業界で有名なのは、東京スター銀行。ここはかなりのリスクを負って積極的に案件を取りにいくので有名です。実はここ、台湾資本なのですね。過去さまざまな経緯があり、今は台湾大手の中国信託商業銀行の傘下にあります。道理でね。日本の金融機関じゃこうはいかないと思いました。

これからますます直接金融、つまり株式市場を通じて資金調達する流れが加速すると思います。銀行は20世紀型の古い仕事のやり方を捨てて21世紀型の新しい仕事のスタイルを身に付ける必要があるのですが、さてどれだけの銀行がそれを実行できるでしょうか。学生さんはこのトレンドをよく見て就職を考えないと、定年までいられると思っていたら後悔しますよ。甘い時代はもう終わったのです。