働き方改革が経営にもたらすもの

働き方改革キックオフセミナー

三重県津市で開催されたセミナーに参加して、サイボウズの青野社長の講演を聴いてきました。ウチで複業してくれている岡田君の存在もあって、サイボウズさんは気になる存在です。「会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。」著作も拝読しました。恐らく、サイボウズの働き方改革の動きを見ている人たちは、共通である不安を抱くと思います。「理念は素晴らしいけど、そんなことして経営的にマイナスになるのではないか」と。

非常に乱暴な表現をすれば、サイボウズ流の働き方改革とは、個人のわがままを聞いてあげること、です。これはがむしゃらに働いてきたモーレツビジネスマンであればあるほど反感を持つところです。
会社に何しに来てるの?
遊びじゃないよ、仕事だよ、ツラいのが当たり前だよね?
おカネを稼ぐって厳しいに決まってるじゃない
そんな声が聞こえてきます。私にもそういう思いはあります。しかし、これが古い価値観だと青野さんは言います。

サイボウズでも始めから綺麗な理念があったわけではありません。28%という高い離職率に悩み、このままではダメだ、何かを変えないと。そういう苦しい摸索から一つ一つ手探りで突破口を開いてきた結果が、サイボウズ流の働き方に結実しています。青野さん自身がモーレツビジネスマンでブラック経営者だったのです。ITベンチャーなのだから深夜残業当たり前、そういう会社に入ったんでしょ、という姿勢でした。しかしそれではどうにもならないカベにあたった、ということなのです。

社員が会社を辞める理由はさまざまです。そこに統一の解があるわけではなく、一人一人の事情に向き合うことしかできません。それが個人の尊重ということです。しかしここで大きな問題が生じます。それは公平性をどう担保するか、です。どうしてアイツは自宅で作業が許されるのか、どうしてあの人は時短で早く帰ってしまうのか。これを不公平だと感じてしまうとチームがめちゃくちゃになります。そうじゃないんだ、一律に同じルールを強制されて会社の都合に合わせないといけないことがそもそも理不尽なんだ、組織よりも個人を大事にしよう。これが大きなパラダイム転換なのです。ここの価値観の転換ができないと、本当の意味での働き方改革は実現できないと思います。

実際に働き方改革を導入したサイボウズでは、経営にどんな影響があったのか。実は想像以上にプラスに働いたのですね。時短や育休で辞めずに済んだ人が確保できたのがまず大きい。そして、複業やリモートワークで東京以外で働いたことが、新規の顧客や地方のチャネルの開拓につながっています。人は会社以外でもなにがしかのコミュニティと関係性の中で活動しているわけですから、そこでできた新しい人脈や仕事関係が本業の役に立たないわけがないのですね。そんな上手く行くか、と疑問視される方は、自分が会社を離れてどんなことをしているのか思い描いてみればいいと思います。みんなどこかで誰かと何らかの新しい価値を生み出しているはずですよね。根本は、人を信用しようよ、ということに尽きるのかも知れません。

数多のビジネス書を読んだ経験では、結局組織の盛衰はメンバーのモチベーションを引き出せるかどうかにかかっていると考えています。人が集まって活動している以上、その人の能力を最大限発揮してもらうこと以上に大切なことなんてないのです。あとはみんなオマケです。

いま日本の古い大企業に不祥事が相次いでいます。そろそろみんなが気付きだしているところなんじゃないでしょうか。大企業の理屈って古いんじゃないの、旧来の価値観の延長上に幸せってないんじゃないの、と。組織のために個人が我慢するんじゃなくて、個人の幸せのために組織になにができるか。この大きな転換点をクリアできれば、日本も復活するんじゃないでしょうか。みんな幸せになるために生きてる。このシンプルな原則に立ち返って、全てを組み立てましょう。これが21世紀の新しい価値観なのだと思います。