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赤身肉ブームの先駆け的存在『肉山』。「決して値下げ交渉しない」理由とは?

東京・吉祥寺に本店を持つ『肉山』は、全国から肉好きが殺到する人気店。年内の予約はすでに終了していて、名古屋や福岡など系列店も各地で話題を集めています。メニューは、ボリュームたっぷりのお任せコース(税込み5,400円)のみ。飲み放題付きだと1万円ですが、普通の飲み放題ではまずお目にかかれないようなハイグレードなお酒もラインナップされています。肉好きを熱狂させる魅力は、その圧倒的に高いコストパフォーマンにあるようです。そこで『肉山』を手掛けた光山英明さんに、肉の仕入れや調理法を伺いました。

予約が取れない人気店『肉山』を手掛ける光山英明さん

炭火で焼いた赤身肉 焼き方のこだわりは?

『肉山』では、熊本産のあか牛、岩手県産の短角牛などの赤身肉を数種類、炭火でじっくりと焼いて提供しています。牛だけでなく、豚肉、馬肉、ときに魚介が出ることもあるそうです。ただ焼くだけでなく、自家製のパテやソーセージにするなど、調理法を変えることで飽きが来ないようにしています。この構成にはどんなこだわりがあるのでしょうか。

「あんまりこだわりはないです。ひたすらお肉が食べられる料理を出しているという感じなので。肉から始まって肉で終わるみたいな(笑)。お客さんは待っているだけ。そこに焼き野菜が2、3種類入ったり、肉の種類や部位が変わったりするという感じです」

『肉山』では塊肉を炭火で焼き、カットして提供しています。この焼き方は知り合いのレストランのシェフに、お店に来てもらって教えてもらったそうです。

「ファミレスに行くと、鉄板で肉がジュウジュウ焼かれながら出てきますよね。ああいう形じゃなくて、自分が焼いて切って提供して、お客さんが箸で食べるときにベストな状態になるように持っていきたかったんです。前は『肉が焼かれていることに気付かないくらいの温度』で、遠火でそぉーっと時間をかけて焼いていたんです。そうすると断面がきれいなロゼ色になるんですけど、あまりにも表面がフワフワしていてお肉っぽさがないという意見がありました。今は焼いている途中で火に近づけて表面をクリスピーにして、食べた時に『サクッ、じゅわ~』となるようにしています。具体的な温度? それは分からんわ(笑)。オーブンを使っているわけじゃないし、見た目と感覚で焼き加減を判断していますね。豚肉の場合は分厚い塊を遠火でじっくり焼いた後に、サウナでバスタオル巻いたら汗が出てくるような感じで、蒸し焼きにしています」

絶妙な焼き加減で焼かれた肉や野菜は、山のようにテーブルに運ばれ、客を笑顔にしています。締めに選べるカレーも人気が高く、『肉山 渋谷カレー』という専門店もあるほどです。


肉山の食材原価率は?

見た目の感覚で焼き加減を判断する、まさに職人技

『肉山』といえば圧倒的にコストパフォーマンスの高い肉が魅力ですが、原価率はどのくらいでしょうか。

「きちんと計算はしていませんが、45%から50%くらいじゃないですかね。使うときに提供価格と見合うかどうかはチェックしますが、その後は、仕入れ価格によって肉のサイズを変えたりせずに提供しています。僕が最初に飲食店をはじめてから15年くらい、ほぼ同じ肉を使っていますが、当時と比べて価格はすごく上がっています。でも、『もっと安くしてよ』とか言ったことはないんです」

光山さんのこだわりは、仕入れに対して定価を支払うということです。一年先の仕入れまで大量に予約を入れているのですから、価格交渉もおそらく可能だと思いますが、あえてしません。

「うちは15年前から、ビールは原価ですし、お肉も希望小売価格で仕入れています。仕入れで値切ったりするのはアカンというのが自分のルールなので。例えば向こうから『ズッキーニが予定よりたくさん採れすぎたので、安くするから多めに仕入れてください」と言ってきたときには甘えますけど。『これだけ買うから、勉強してくださいよ』ということは言いません。だって、普通ごはんを食べに行って『7割の量でいいからまけてくださいよ』って言わないですよね? 飲食店の人ってちょっと変わっていて、『キュウリの先がちょっと曲がっている』という理由で値切ったりするんです。酒屋さんからお酒をいっぱい買っているからと言って価格交渉したり、『あれとこれをつけてくれ』という注文をつけたりしますよね。それは根本的に間違っていると思います』
光山さんは開業前、大阪で酒屋の卸売りをしていたそうです。車で飲食店を回り、営業活動をしていた当時は、他社とのわずかな価格差を交渉に使われることも多かったようです。

「僕の営業能力のなさが原因かもしれないですけど、酒屋の場合はどこも同じものを売っているものですから、結構値切られるんです。仮に僕が希少な銘柄を持っていたら、価格交渉はしませんよ。どこにでもある瓶ビールやウィスキーだから、値切ってきます。みんな都合のいいように考えているんですね。ちりも積もれば山となるということもかもしれないけど『100円、200円の差がそんな大事?』と思います。だいたい、お金をもらうのは喜ぶのに、払うのは嫌がる店が7割じゃないですか。メインで使っている酒屋さんへの支払額が増えるのは、普通に考えたら喜ばしいことなんですよ。仕入れの量が増えれば増えるほど、自分の店の売り上げも上がっているはずなので。先月10万だったのが15万になったら『よかったね』って喜べばいいじゃないですか。でも支払額が増えると『酒屋さんのために働いているみたいやわぁ』って不平不満を言う人はいるんですよね」

『グルメ多動力』という本の対談記事によると、光山さんがお酒の卸売りをしていたころ、金銭が原因の恨み節を聞いたり、もめて裁判や廃業まで追いつめたりする店を見てきたそうです。そういう経験もあって、15年前にオープンしたホルモン焼き肉店には、『わ』という店名をつけました。

「『わ』という名前は、輪という意味で名付けたんです。その輪の中には僕やお客さん、スタッフ、仕入先の肉屋さん、八百屋さん、酒屋さんという感じで、あらかじめ決めているんです。たぶん『これだけ買うからちょっと勉強してくださいよ』って僕が頼んだら、相手は受け入れてくれると思うんですよ。でも普通に考えると仕入先の利益が減るじゃないですか。そうすると輪の中で僕はとんがって、相手は凹みますよね。それがダメなんです。常に丸くなっていないとアカンって考えているんです」

自分だけ圧倒的に儲かることよりも、「かかわる人みんなが得をする」ということを重視している光山さん。スタッフにも、のれん分けをしたり、新しい店に出資したりさまざまなサポートを行っています。

肉の目利きは必要?

肉山のソーセージ

肉山の魅力は圧倒的なコストパフォーマンスです。仕入れの時には肉の「目利き」が必要なのでしょうか?

「僕は生産者のところに行っているわけではないので、仕入れ先の目利きを信用して任せています。たまたま後輩が有名な肉屋をやっているので、そこから『肉山』の肉の9割を仕入れていますね」

業者に任せておけば、極上の肉が良い状態で届けられるようです。信頼できる業者の見つけ方はあるのでしょうか。

「見つけ方は分かりませんが、つきあい方でいうたら極力たくさん仕入れて、極力早くお金を支払うことですね。これは当たり前のようで、みんなやらないんですよ。早く支払われたら誰でも気持ちがいいし、うれしいですよね。これは飲食業界というよりは人としての常識じゃないですか。僕の場合は、肉は先に1年分注文しておいて、直前に量を確定させています。ルール上末締めの翌月末払いだったとしても、月初に請求書が来た時点でパッと振り込みます。逆の立場だったら気持ちがいいですよね? 姑息な発想で『これだけしているんだから、ええ肉を回してくれよ』っていうつもりはないんです。それは、希少性が高くて『このAの肉は5店舗にしか卸せない』というときにうちに回してくれることはあると思うし、まったく計算していないと言ったらウソになります。でもそれが目的ではなく、あくまで感謝の気持ちからやっていることです。今時買い叩いている店があるのかはわからないけど、あったらそんな店なくなるよね」

信頼できる業者を探すのではなく、まず自分を信頼してもらい、気持ちよく働けるよう努力している光山さんの考え方は、とても新鮮でした。資金繰りが苦しいときはどうしても仕入れ価格の値引きや、支払いの猶予をお願いしたくなるものです。ですが、余裕が出てきたらいつもより少し早めに支払う、いつもより先の分まで予約するということを続ければ、お互いに支え合い、成長していける良い関係が築けるかもしれません。


『肉山』
住所/東京都武蔵野市吉祥寺北町1-1-20 2F
電話番号/0422-27-1635
営業時間/月~金曜日 17:00/20:00開始、土・日曜日 12:00/17:00/20:00開始
定休日/不定休


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